Top向学新聞日本で働く留学生OBたち方 長松さん


方 長松さん(中国出身) 
(進和株式会社) 


面接では自分の考えをアピール
チャンスをいかにつかむかが重要


――来日したきっかけは。
  私は中国の大学で農業器具設計の勉強をした後、貿易関係の仕事をしていました。そこでは日本のお客さんが多かったので日本語を本格的に勉強しようと思い、日本語学校に留学し、その後専門学校に進学しました。
 来日後、私は新聞奨学生として毎朝新聞配達をすると同時に、契約営業もしていました。徐々に1ヶ月に取れる契約件数が増え始めて達成感を感じ、お客様と親しくなってネットワークが広がるにつれて、価値観が変わってきました。自分は営業に向いていると思い、日本語学校を卒業後には経営専攻へと針路を大きく転換しました。
  就職活動を始めたのは、専門学校卒業の半年前と遅く、アプローチしても既に募集を締め切っている企業がほとんどでした。また、中国での専門だった機械設計と日本で勉強した経営は内容が全く違いますので、なぜ方向転換をしたのか採用担当の方に説明し納得してもらうのにたいへん苦労しました。
  面接まで進んだ企業はいくつもありましたが内定はもらえませんでした。客観的に原因を分析してみると、面接で自分の意見を述べるよりも、「仕事を一生懸命やります」といって会社に合わせていただけだったことに気がついたのです。そこで次の面接からは、他人と違ったイメージを出してみようと思い、積極的に自分の考えをアピールしてみました。そうやって最初に内定を頂いたのが今の会社です。
  1次面接では能力面を試されたあと、2次面接では課長以上の役員8人と私とで2時間話し、問題が起きたときにどう対処するかなど人格面を試されました。次の第3次面接では、社長が「それほど大きな会社ではないから1ヶ月か2ヶ月給料が払えない時があるかもかもしれない。それでも仕事をしたいか」というのです。私は驚きつつも、「100万円の仕事をしたなら10万円もらえるのは当然で、それを景気が良くないから払えないというのはおかしい。私は利益率10%の案件を取ってきて15%の給料を要求するようなことは絶対しない」とはっきり答えました。すると社長は「あなたが1000万円の仕事をしたら報酬を100万円約束するからそれができるか」というのです。私は「仕事を全部覚えれば、できます」と答えたところ、「わかった。いつでも仕事していい」と言ってくれました。私の本当の決心を見るための最後の試験だったのです。

――就職活動のアドバイスをお願いします。
  重要なことは、チャンスをいかにつかむかということです。わたしも新聞配達だけしていればそれなりの留学生活でしかなかったと思いますが、奨学生は普通はしない契約営業をすることで、自分の人生が大きく変わる契機となりました。チャンスはふとしたことで与えられるのですが、それがチャンスだと分からずに逃すことが多いのです。20代、学生時代には、将来役に立つことなら忙しくても苦しくても経験すべきです。苦労して勉強したものはすべてその人の財産になります。世の中楽なことだけでは進みません。チャンスをいかにしてつかむか、若い皆さんは良く考えて生活してほしいと思います。