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障子  


陰翳の美を醸し出す
日本の建築文化の象徴  実用面にも優れる


1709 障子 安房の農家(居間)

 安房の農家(居間)


 障子は日本の建築文化を象徴する建具であり、一般家屋の和室や和風旅館などには欠かせない。半透明の和紙を張ってあることから部屋に差し込む光が柔らかくなり、遮熱性が高いのでエコ効果がある。また、和紙は吸湿性があるので全面ガラス張りの窓よりも結露が出にくく、カビが生えにくいので清潔であるなどの利点を持ち、日本建築の機能美を体現しているといえよう。

 障子がもたらす独特の光は住宅の印象を決定付けている。谷崎潤一郎は著書「陰翳礼賛」で日本建築が持つ陰翳の美を讃えた。それは光の濃淡、明暗がもたらす美だが、翳りと採光、美と実用を両立せしめているのがほかならぬ障子である。奥の間は暗く涼しいのが日本の家というもので、障子が光や温度を段階的に調節して奥の間らしい環境を成立させている。

 和風旅館では障子を閉めれば朝から強烈な朝日で無理やり起こされることがなく、起床すべき時刻を控えめな光で知らせてくる。その緩さもまた和風旅館の趣のひとつである。

1709 障子 和風旅館の一室

 和風旅館の一室




 
2017年9月掲載
 




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