Top向学新聞>留学生座談会2016年6月号

留学生座談会 

~インターン~


日本社会ともっと関わりたい  
「成長せざるを得ない環境だった」

 公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)の「アジア留学生等支援基金」は、アジアからの留学生が日本の市民組織(非営利民間組織)でインターンを行うプログラムを支援している。今回は、同基金で昨年インターンを経験した現役留学生・卒業生に、インターンの感想を伺った。




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孫 思依さん(中国)
東京大学大学院

【インターン先】日中市民社会ネットワーク (CSネット)
日中間で環境、災害、高齢社会などの社会的課題の解決に取り組む 
【インターン先での活動】
中国の子供向け来日キャンプ、在日中国留学生向け自然教育体験プログラム


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チュ・リー・イさん(マレーシア)
千葉大学(インターン時)

【インターン先】NPO法人スマイルクラブ
スポーツを通じて社会に貢献 
【インターン先での活動】
発達障害者や運動が苦手な児童向けの運動補助


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陶 蕊さん(中国)
東京大学

【インターン先】NPO法人FACIL
地域住民である外国人が必要とする情報の翻訳や生活現場で必要な通訳者の派遣など多言語環境の促進
【インターン先での活動】
旅行パンフレットなどの翻訳・校正作業など


――どのような職場でインターンを経験したのですか。

)昨年の夏から非営利組織の日中市民社会ネットワーク(CSネット)でインターンを始めました。大学院の専門がPM2・5などの大気汚染問題で、環境分野に関心があり、中国の子供向けの来日キャンプや在日中国留学生向けの自然教育体験プログラムに関わりました。


チュ) 私は昨年の夏休みの期間、NPO法人スマイルクラブで発達障害を持つ児童を対象としたスポーツ補助の活動に携わりました。


) 私も昨年の夏休みに、神戸にあるNPO法人FACILで地方の多文化共生、外国人支援の活動に携わり、主に観光パンフレットや地方自治体の旅行案内の翻訳・校正作業などを行いました。


―なぜインターンをしようと思ったのですか。


) 大学院で大気汚染の研究をしているものの、研究内容は即座に問題解決には結びつきません。実際に環境問題の解決に繋がる仕事がしたいとインターンへの参加を決めました。
 環境問題に関心をもったきっかけは日本留学です。出身地である中国・上海は、経済の中心地ですが、人口密度が高く、環境汚染も酷い状況で「黄色い空」が当たり前だと思い育ってきました。留学のために東京に来たら、上海同様経済の中心地であるのに、「なぜ青空が見えるのか」「なぜ水道水が飲めるのか」と非常に驚きました。日本の取り組みに感銘を受け、「環境問題にかかわりたい!」と思ったのです。


チュ) 私は今年3月に大学を卒業して日本で就職しましたが、元々はマレーシアに帰国する予定でした。「日本での最後の夏休みを有意義に過ごしたい」という思いからインターンへ参加しました。スマイルクラブを選んだ理由は、「子供が大好き!子供たちを喜ばせたい!」という動機でしたが、活動に参加してみると逆に力をもらったのは私の方でした。


) 当時は就職活動をしようか、大学院に進学しようか迷っていました。せっかく日本に留学したのだから、「日本の職場を体験しよう」と応募しました。FACILを選んだ理由は、「地方の人と関わりたい」、「日本のNPOがどのように外国人支援に取り組んでいるのか知りたい」と思ったからです。


――実際にインターンを経験してどうでしたか。

) CSネットは私を含めてスタッフが4人です。常勤スタッフが少なかったため、私も学業と両立しながら、イベントの企画から運営まで何でもする必要があり、成長せざるを得ない環境でした。
 「在日中国留学生向け自然教育体験」(昨年12月)は私が全て手掛けたプログラムで、東大・早稲田・東京学芸大学の計11名の中国留学生が参加しました。岐阜県のトヨタ白川郷自然学校で自然教育の講義や雪山での自然体験などを実施しました。環境教育に対する理解を広めたいという気持ちと同時に、日本に留学している中国留学生の不安を和らげることが出来ればという考えがありました。留学生のなかには研究が大変だったり、孤独感から鬱になってしまう方がいるからです。自然に触れることで少しでもストレスを解放してほしいと思いましたが、参加した中国留学生は「良かった」という反応が多く嬉しかったです。
 ですが、「環境教育」に関心を持ってくれた留学生は少ない印象でした。今後の課題は、環境教育に関心がある人材をどのように育てるのかです。イベントの企画だけではなく、どのような人を募集するかでイベントの成功度合いが変わってくることを学ぶことができました。


チュ) 私の場合はコミュニケーション能力が向上したと感じます。メインの活動は発達障害の方のスポーツ補助なので、活動を始めた頃は、健常者の方と比べて気持ちを伝えることが難しかったです。ですが、真摯に子供たちと接していくことで徐々に信頼関係を築くことができました。支援する側だと思っていましたが、彼らからは人生の教訓を学びました。欠けているものよりも、今自分が持っているものを磨いて生きること。小さな幸せを大切にすることです。本当に素晴らしい方々と出会えたなと思います。

) 私は地域の外国人のための翻訳・校正の仕事が多かったため、語学力や文章をまとめる力を高めることが出来たと感じます。また、人と人との繋がりを強く感じた日々でもありました。神戸での3週間のインターン期間中は、インド人と日本人夫婦の家に泊まらせて頂いたり、夏祭りでは、地元のおじいさん・おばあさんに盆踊りを教えて頂いたり充実した日々でした。
 出身である中国・瀋陽は、地域でのコミュニティ活動は日本のように活発ではありません。日本では幅広い国籍や年齢による多元性が豊かな街づくりに役立っていることが分かりました。中国では地域よりも、家族・親戚が集まって祭りをするので、中国と日本の違いを知る機会になりました。
 インターンの最後には、「地元の料理をスタッフの皆さんに食べて頂こう!」ということで、他のインターン生と中国の家庭料理をスタッフ30人分作りました。皆さんが「美味しい」と食べてくれとても嬉しかったです。日本の職場で就業体験ができ、社会人への第一歩を踏み出せました。


―皆さん貴重な体験をされていますね。留学生にとって、インターンは学校だけでは体験できない日本社会を知る機会になることが分かりました。どうすればインターンに参加する留学生が増えるでしょうか。


) 私の周りには理系の留学生が多く、研究活動が忙しくてインターンに参加している人はほとんどいないのが現状です。


)私も理系ですが同感です。ただ、私の周りには「インターンに参加したい」という留学生が一杯います。問題はきっかけがないことが大きいと思います。


チュ) 確かに。インターンに参加したくてもインターンに関する情報が少ないですよね。

) わざわざ日本を選んできた留学生は、日本の社会ともっと関わりたいと思っています。そういった意味でインターンは、日本社会との接点、就職のための準備など色々な意味で重要です。情報提供など、留学生とインターンを繋ぐきっかけが増えていけばと思います。

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