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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>山崎光悦氏(金沢大学学長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

山崎光悦氏(金沢大学学長)         
 ×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


「金沢大学ブランド」の確立へ  
日本語と英語で独自テキスト作成


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3月14日。北陸新幹線がいよいよ開通し、盛り上がりを見せる石川県金沢。歴史ある地にキャンパスを構える金沢大学は昨年、文部科学省事業「スーパーグローバル大学創成支援事業」に採択され、世界へ「金沢大学ブランド」をアピールする。今回は金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授が、金沢大学の山崎光悦学長にお話を伺った。


(佐々木) 「スーパーグローバル大学創成支援事業」は、全学的にグローバル化に取り組む大学を10年という長期間にわたり支援する文科省の一大事業です。金沢大学ではどのような改革に取り組まれるのでしょうか。

(山崎) グローバル社会を牽引するグローバル人材の育成と「金沢大学ブランド」の確立を目指しています。日本人留学生の派遣にはこれまでも力を入れてきましたが、近年の若者が海外に行ってぶつかる課題は、例えば「日本について説明できない」ということなんです。英語だけが問題じゃないんですね。それで歴史的また地理的な日本の立ち位置をしっかり教え込むことが重要だと気付きました。それが①自己の立ち位置を知るということです。その他、②自己を知り、自己を鍛える③考え・価値観を表現する④世界とつながる⑤未来の課題に取り組む、という5つの能力を金沢大学<グローバル>スタンダードとして設定し教育を行なっていきます。
 数値目標としては例えば、日本人学生の留学経験者の割合を年間11・6%(1080人)、外国人留学生の割合を20%(2200人)、外国語による授業科目の割合を大学院課程で100%、学士課程で50%まで引き上げます。また、世界5箇所にサテライト拠点を設置し常勤職員を派遣しようと計画しています。米国タフツ大学、スコットランドのエジンバラ大学、ベルギーのゲント大学にあと2箇所を加え、海外に派遣する日本人学生のサポート、外国人留学生への情報提供などをワンストップで行ないます。外国人留学生の就職先も受け入れ後の大きな課題ですが、今後10年間で、世界レベルの多国籍企業へ150人を就職させることを目標としています。

(佐々木) なるほど。今後、具体的にはどのような取り組みになるのでしょうか。

(山崎)まずは教職員をしっかりトレーニングし、環境を整えることが重要だと考えています。国際交流協定校であり米国トップレベルにランクされているタフツ大学から、教員研修や留学生支援の専門スタッフ数名を常時派遣してもらい、教職員の研修プログラムを開設します。模擬授業など、質の高い実践的な内容の研修を導入することにより、教員は国際基準の授業、事務職員の半数は英語での対応ができるようになります。
 また、金沢大学独自のテキスト作りにも着手しています。100人余りの教員がそれぞれの専門に沿った内容のテキストを日本語版と英語版で作成し、今年からパイロット版として授業に導入、来年度には全面的に展開します。どの教員が授業を担当しても、統一性のある内容を指導できる質の標準化を達成するためです。

(佐々木) オリジナルテキスト作りから取り組まれるのは本当に素晴らしいことですね。様々な取り組みから「金沢大学ブランド」へのこだわりを感じますが、金沢という土地柄を活用したプログラムはあるのでしょうか。

(山崎)はい。金沢には金箔、蒔絵、水引きなど特有の伝統工芸や伝統文化が豊富にあります。そういった伝統工芸・文化を留学生が体験する「金沢学」というプログラムを開設しており、これに日本人学生も混じって交流しています。
 また、昨年から「人間力強化プログラム」として、石川の能登半島などで一年生を対象とした合宿をスタートさせました。今年の2月には2泊3日で富山の世界遺産・五箇山を訪れ、地元の方々のお宅での民泊や五箇山郷土芸能体験、雪かき、座禅体験、学長講義など密度の濃い合宿が出来ました。多くの新入生に、学生生活あるいは社会に出てからも自らを鍛錬し続ける精神力を養ってほしいと思い企画し、私も一緒に参加し先導しています。

(佐々木) 大変ユニークなプログラムですね!留学生にとっては、日本文化を堪能できる貴重な機会になると思います。今後はどのように留学生の受け入れを拡大していくのでしょうか。

(山崎)現在、ベトナム教育訓練省、ベトナム・メコン州政府、インドネシア教育文化省高等教育局と協定を結び、学位を取得していない現地トップ大学の助教や講師を留学生として受入れています。昨今両国は、高等教育ニーズが急激に高まり学生が増える一方で、教員が足りないという状況に直面しています。間に合わせで教員を補充しているようですが、二人に一人は学位を持っていません。そこで、本学で博士論文を書き博士号を取得して頂いています。
 彼らは留学生活を終えたら母国の大学教員になる方がほとんどですので、将来的に教え子を留学生として派遣してくれる可能性が非常に高く、継続的な友好関係が期待できます。私自身昨年は、ミャンマー、ラオスを訪れ、今年は東ティモールなども検討しており、友好関係を持つ大学の範囲を拡大したいと考えています。今後南アジア経済圏が世界で最も大きな経済規模になることは様々な研究から明らかであり、我々のパートナーがどこにいるのかが、本学さらには日本の将来を大きく左右すると思うからです。

(佐々木)まさにその通りですね。教職員の訓練から独自テキスト作り、地域とのつながりを活かした体験プログラムに将来を見据えた諸外国との関係構築など、日本が目指すべきグローバル大学像のヒントが盛りだくさんですね。この度は貴重なお話をありがとうございました。

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やまざき こうえつ 1976年金沢大学大学院工学研究科修士課程修了。博士(工学)。同年4月から金沢大学で勤務し工学部教授、理工学域長・研究域長、理事・副学長などを歴任し、2014年4月から現職。



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