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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>石川憲一氏(金沢工業大学学長)×佐々木瑞枝氏(武蔵野大学教授)

石川憲一氏(金沢工業大学学長)×佐々木瑞枝氏(武蔵野大学教授) 


教育分野でランキング1位  
自ら考え行動する技術者育成

 日本の教育はグローバル化への対応に迫られている。コミュニケーション能力、論理的思考力など総合的な力の育成が求められている中、石川県にある金沢工業大学は全国の学長から高い評価を受けている。今回は、武蔵野大学の佐々木瑞枝教授が、金沢工業大学の石川憲一学長に教育のあるべき姿について聞いた。


(佐々木) 金沢工業大学(KIT)は、朝日新聞出版の「週刊朝日ムック」大学ランキングで、8年連続教育分野で1位の評価を得ています。これは全国の学長からの投票で、その高評価ぶりが伺えます。どのような点が他大学とは違うのでしょうか。

(石川) 私達は「学力×人間力=総合力」という考えのもと、知識を知恵に転換することで次世代のイノベーションを生み出す技術者の輩出を目指しています。実際の社会に出ると、学力だけではなく、人物像全体が評価されます。そこで重要なのが個性や考え方、その人の根っこにあるものなのです。例え学力が9あったとしても、人間力が1では掛け算すると総合力は9にしかなりません。しかし、学力が5、人間力が5で掛け算すると総合力は25にもなるのです。そこでKITは独自の「人間力」を定義し、その育成に励んでいます。
 KITの人間力には5つの要素があります。自立・自律力、リーダーシップ、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、コラボレーション能力の5つです。これを学生だけではなく教職員全員にも理解してもらい、授業と授業外教育や活動で涵養しています。

(佐々木) KITでは学力だけではなく、世界に通じる人間力を養って学生が社会に飛び出していくのですね。素晴らしい教育方針ですが、具体的にはどのような教育が行われているのですか。

(石川) 具体的な改革として、KITは全ての授業科目でアクティブラーニングを導入しました。知識の取り込み、思考・推論、発表・表現を繰り返し行うことで、教育目標とする「自ら考え行動する技術者」を育成しています。 また、基礎実技教育課程と数理基礎教育課程を担当する教員は、教員個室をなくして、学生がいつでも質問できる学習環境を提供するプロジェクト教育センターと数理工教育研究センターを作りました。さらに、1~3年次の必修科目として、能登半島にある海洋研修施設である穴水湾自然学苑で二泊三日の「人間と自然」セミナーを開催しています。ここではカッター体験や、グループディスカッションを行い、その結果をプレゼンテーションするなど、礼儀・規律・共同の精神を学ぶ場になっています。このセミナーには海外提携校からの留学生も参加し、学生にとって非常に印象的なセミナーになっています。また、365日24時間オープンしている自習室も設置し、年間延べ52万人が利用しています。さらに、各種工作機械、高性能パソコン、最新の映像設備などを揃え、学生が金属加工やCGなどのデジタルコンテンツ制作など、自由にものづくりができる「夢考房」を1993年に開設し、学生達の夢の実現をサポートしています。
 KITは、2000年の中頃から評価して頂くようになったのですが、私が第5代学長に就任したのは1994年でした。これまでの、教職員が中心だった大学を逆転させて、「学生が主役の大学」を作ろうと宣言しました。当時51歳ととても若かったのですが、本学の第2代学長で顧問の京藤先生から、「私心は捨てろ。自分の名誉だとかそんなものの為にやるんじゃない。大学の為に私心を捨てることが成功の要諦だ。成功するまでやるんだ」と薫陶を受けたことが、改革実行の原動力となっています。

(佐々木) 石川学長が18年間も教育改革に取り組まれ、今日の大学の風土を作り上げてこられたのですね。グローバル化という観点ではどのように人材を育成していらっしゃるのですか。

(石川) 米国のローズ・ハルマン工科大学、そしてロチェスター大学と交換留学の協定を結んでいます。また、泰日工業大学(タイ)という「日本型ものつくり大学」を目指す学校があるのですが、泰日工業大学の学生が科学技術を学ぶため本学に一定期間留学しています。 こういった国際交流で大事な点は、異国の文化を理解し、かつ日本の文化を理解してもらうことです。相互理解が上手くできなければよい交流はできませんし、まして日本の型に当てはめようとするべきではありません。

(佐々木) その通りですね。私も海外から留学生を受け入れるにあたって、「郷に入れば郷に従え」ではなく、相手が何を求めているのかをまず聞くように努力しています。

(石川) また、日本人学生が今後海外で活躍するためには、コミュニケーション能力に加えて、国家観をしっかり身につける必要があります。その為、2年次から「日本学」という授業を必修で履修します。近代日本までの偉人を通して、当時の経済や歴史を学び日本人としての価値観を涵養しています。
(佐々木) 素晴らしいですね。今後の更なる発展を期待しています。貴重なお時間をどうもありがとうございました。

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いしかわ けんいち 金沢大学工学部精密工学科卒。同大学大学院工学研究科修士課程(精密工学)修了。1970年4月に金沢工業大学講師に就任。それ以降同大学の教授、教務部長、副学長などを歴任。1994年6月に第5代学長に就任。


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