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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>安藤裕康氏(国際交流基金理事長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

安藤裕康氏(国際交流基金理事長)        
×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


日本語パートナーズ3000名派遣へ  
無料オンライン日本語講座の教材を開発

正面笑顔背広(理事長室)HP

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 グローバル化が進展する今日において、日本文化の発信と異文化理解の重要性はこれまでになく高まっている。国際交流基金は、日本語教育・文化芸術交流・日本研究等を中心に、日本と世界を繋ぐ役割を担ってきた。これまでの活動と今後の展望について、国際交流基金の安藤裕康理事長に金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授がお話を伺った。


(佐々木) 国際交流基金がこれまで世界の中で果たしてきた役割についてどのようにお考えでしょうか。

(安藤) 国際交流基金が出来て42年になりますが、我々は「海外における日本語教育」、「日本研究・知的交流」、「文化芸術交流」の3本柱を掲げて活動してきました。日本国内4拠点、海外22拠点を中心に日本語教師の派遣、シンポジウムの開催、青少年交流など活動内容は多岐に渡ります。
 近年、日本のアニメ・漫画や、世界遺産に登録された和食などの「クールジャパン」が世界中で人気です。クールジャパンは元々、英国の「クールブリタニア」を参考にしたもので、英国が自国を全体として世界に発信する戦略でした。クールジャパンはビジネスを通して新しい日本を世界に広めるというビジネスの側面が強調されすぎている気がします。我々の活動は、ビジネスとしてではなく、日本をいい国だと外国から認識してもらうことが目的であり、広い意味でのクールジャパンの一端を担っていると考えています。

(佐々木) 文化交流という側面では、中国語・中国文化普及拠点の孔子学院が世界中で設立されている他、韓国のコンテンツ産業が勢いを増しています。今後の日本文化普及のため、国際交流基金が出来ることは何でしょうか。

(安藤)他国の動きが活発ですが、それに対抗しようとするのではなく日本らしい形で文化交流を進めていくべきでしょう。国際交流基金としては、欧米はもちろんですが、近年特にアジアに注目しています。世界に占めるアジアの重要性の高まりや、日本と経済的・歴史的・外交的繋がりが近いからです。そこで、日本とアジアが対等の立場で交流し新しい価値を作っていくため、4月1日に「アジアセンター」を発足させました。追加的に大きな予算も頂きましたので、2020年までの7年間で総額300億円を投じ、日本語学習支援事業と芸術文化交流事業の強化を目的としています。
 中でも「日本語パートナーズ派遣事業」が目玉の一つです。これは若者からシニアまでの幅広い人材を対象として、アセアン諸国の高校等に半年~1年間派遣します。現地日本語教師のアシスタント役を担っていただくと同時に、現地の言語や文化を学び日本とアセアンの架け橋になっていただくことが目標です。2020年までに3000人以上の派遣を目指し、第一陣として、今秋からインドネシア・タイ・フィリピンに約60名が向かう予定です。

(佐々木) それは素晴らしいですね。海外の日本語教育の現場では、日本語教師数の不足や教育の質が問題になっていますが、日本人が直接教育現場に関わる機会が増えることになるのですね。

(安藤)そうですね。世界の日本語学習者数は約399万人(2012年時点)で、右肩上がりで増加しています。例えば、アセアン諸国の中でもインドネシアの増加率は著しく、約87万人と世界で2番目に多い学習者数を誇っています。その95%以上は高校生・中学生で、現地のインドネシア人教師が日本語を指導しています。ですが、学習ニーズに現場が対応しきれない課題があり、そこで直接日本から高校等に日本語パートナーズを派遣しようということです。
 戦後、最も成功した文化交流の一つとして「JETプログラム」が挙げられます。英語を母語とする大学卒業者を、日本の小中学校と高校に派遣し、英語教師のアシスタントとして配置しています。いわばこの「逆JETプログラム」をアセアンで展開しようということなのです。

(佐々木) 日本語と言っても、ポップカルチャーに興味がある学習者や、より専門性の高い分野を学びたい学習者などニーズは様々です。どのように学習者のニーズに対応しているのでしょうか。

(安藤)ニーズの多様化に伴い、Eラーニングで幅広い学習ツールを提供しています。例えば、クイズやゲーム形式で楽しく日本語を学習できる「アニメ・マンガの日本語」や、看護・介護分野向けの学習支援ツール「日本語でケアナビ」などがあります。放送大学と共同で制作したEラーニング教材「にほんごにゅうもん」が、今年4月から、無料オンライン講座サービス「JMOOC」の講義として配信されています。「にほんごにゅうもん」は世界各国どこからでも受講可能で、無料で毎週2レッスンずつ、5週間で10レッスンが配信されます。今後さらにサービスを充実させるため、ライブレッスンや学習管理機能などを提供する総合的なEラーニングサイトを、国際交流基金の日本語研修施設である関西国際センターで開発しています。

(佐々木)外国人留学生受け入れの意義についてはどのようにお考えでしょうか。

(安藤) 日本で学ぶ外国人留学生は非常に重要な役割を持っています。将来母国を担う人材が多いでしょうから、ぜひ親日家となって活躍してほしいと思います。そのためにはオールジャパンでの取り組みが欠かせません。例えば第一段階として、「日本語パートナーズ派遣事業」で早くからアセアン現地学生の日本に対する興味・理解を深め、第二段階として大学で彼らを日本に受け入れる。第三段階で、日本企業が優秀な留学生を採用し日本や母国で働いてもらう。このように日本のあらゆるステークホルダーが連携し、高校・大学・就職までのキャリアパスを作り上げていくことができたら素晴らしいでしょう。また、アセアンだけではなく、日本から米国に2300名、米国から日本に2300名派遣する青少年交流事業「KAKEHASHI Project」も2013年から実施されており、国際交流基金もその実施を受託しています。世界と日本を繋ぐ働きかけを益々発展させていきたいと思います。

(佐々木) 日本語パートナーズやオンライン講座など新しい事業の成功を期待しております。貴重なお話をどうもありがとうございました。
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あんどう ひろやす 1970年に東京大学卒業後、外務省に入省。在アメリカ合衆国日本国大使館公使、中東アフリカ局長、ニューヨーク総領事、駐イタリア大使を歴任。2011年10月から独立行政法人国際交流基金理事長に就任 。


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