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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>三谷高康氏(桜美林大学学長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

三谷高康氏(桜美林大学学長)        
×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


中国・北京から「崇貞学園」が出発  
多様な日本語教育プログラム

 戦前の中国・北京で、国籍に関係なく子供たちを受け入れた「崇貞学園」をルーツにもつ桜美林大学。早くからグローバル教育に取り組んできた同大学は、現代も日本人学生の派遣、外国人留学生の受け入れと積極的にグローバル化を推進している。今回は、桜美林大学の三谷高康学長に金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授がお話を伺った。


(佐々木) 桜美林大学設立の背景をお聞かせいただけませんか。

(三谷) 実は、「桜美林」の由来は米国オハイオ州のオベリン大学と深い繋がりがあります。まず桜美林学園創設者の清水安三は、同志社大学神学部を卒業後、日本人宣教師第1号として1917年に中国・大連に渡りました。その2年後に北京へ移り住んだのですが、当時の中国北方は大干ばつに見舞われており、多くの子供達が苦しんでいました。悲惨な状況を目の当たりにした安三は、朝陽門(北京の城門)の外にある倉庫で799名もの子供達を無償で預かり世話をすることにしたのです。幸い翌年に雨が降り、子供達は親元に戻ることができましたが、安三は北京のスラム街にある重大な問題に気づきました。それが女子の身売りです。字が読めない、計算ができない女子は仕事が出来ず身売りされざるを得ない状況に追い込まれていたのです。そこで安三は女子のための学校が必要だと思い立ち、1921年に、干ばつ時に子供達を預かった倉庫で「崇貞学園」を設立しました。そこでは、読み書きそろばんの他、手に職をもたせる教育を施しました。このように中国のスラム街から桜美林は出発したのです。
 1930年代初頭、日本で最初の西洋美術博物館を創設した大原孫三郎氏が崇貞学園を訪れました。安三の子供達への思いに感動した孫三郎氏は、安三の留学を支援することに決めました。孫三郎氏の援助のもと、全米で最初に女性を受け入れ、かつ極めて早く黒人に門戸を開いたオベリン大学で学んだ安三は、そこで桜美林の礎となる思想に出会いました。その後の崇貞学園は、中国のみならず日本や朝鮮半島の子供達を分け隔てなく受け入れ教育する学校へと発展していったのです。
 そして安三は終戦後に帰国しましたが、教育への情熱は衰えず、キリスト教社会運動家の賀川豊彦氏の協力によりここに学校を設立することになりました。桜のたいへん美しい地であることや、大きな影響を受けたオベリン大学の名を重ね合わせて1946年、「桜美林学園」が誕生しました。その後、1966年に大学を開設しました。

(佐々木) 非常に感銘を受ける成り立ちですね。崇貞学園時代からまさにグローバル教育を行われていますが、現在も海外へ留学する学生数が全国的にみても多いようですね。

(三谷) そうですね。本学は学部ではなく学群制を採用しており、グローバルアウトリーチプログラムとしてリベラルアーツ学群を中心に学生を海外へ派遣しています。1年生の秋学期か2年生の春学期に各100名ほどがこのプログラムに参加し、14~20週間アメリカやカナダ、中国、韓国などの大学で語学を中心に学びます。前学期には車椅子の学生も参加してオレゴン州のパシフィック大学で学んできました。これは、アメリカに桜美林が運営する財団があるために手厚くサポートできる体制があってのことです。その他にも、ビジネスマネジメント学群など他の学群でも、海外への派遣プログラムを準備しています。その結果、海外に留学し学位を取得する学生数は日本で五番目に多くなっています。早い段階で海外を経験すると、学びへのモチベーションが格段に上がります。昨年度は、長期留学91名をはじめ計568名が海外留学を果たしました。

(佐々木) 外国人留学生の受入れについてはいかがでしょうか。

(三谷)外国人留学生の受入れ、あるいは国際交流の促進には、国際寮が重要だと考えています。現在、定員245名で日本人学生も一緒に生活している国際寮がありますが、さらにもう1つ、淵野辺駅南側に第二国際寮をオープンさせます。世界中から学生が集まっており、外国人留学生にとってもここに住むことで国際交流ができるという大きなメリットがあります。5月1日現在で外国人留学生数は518名ですが、交換留学などで日本人学生の海外派遣を増やせば外国人留学生の受入れも増やすことができ、受け入れと送り出しの両側面を推進していくつもりです。

(佐々木) 外国人留学生の受け入れ後の日本語教育が重要だと思いますが、どのように取り組まれていますか。

(三谷)建学時から、外国人留学生に対して一から日本語を教えていくという精神をもって取り組んでいます。そのため、初級・中級レベルの日本語教育プログラムは充実しています。買い物や祭りなどの伝統文化などに触れる「体験活動」や、音楽・ドラマ・アニメなどを通じて現代文化を学ぶ授業の他、上級者向けには「地理と歴史の用語」、「職業コミュニケーション」など多様な選択科目を提供しています。個別学習システムの導入や日本人学生も参加する授業も実施しており、外国人留学生が多方面で日本語と関わることができる機会を設けています。また、大学院には日本語教育専攻もあり、外国人に向けた日本語教師養成を積極的に推進しています。

(佐々木) 初級から日本語を指導するのは非常に重要ですね。外国人留学生の受入れを拡大するためには何が必要でしょうか。

(三谷)やはり外国語による授業の増設が必要だと考えています。そのため、英語で学位が取得できるコースを準備することや、中国語での学位取得コースも計画しています。さらに海外拠点もアメリカをはじめ中国やモンゴルに開設し、海外での留学生募集活動を拡大しています。

(佐々木)桜美林大学はグローバル化推進に向けて多彩な取組みをされていらっしゃり大変参考になりました。本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。

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みたに たかやす 同志社大学神学部を卒業後、イェール大学大学院神学研究科で神学修士号、アンドヴァー・ニュートン神学大学院で牧会神学博士号を取得。2006年から桜美林大学で勤務し、宗務部長を経て2012年4月に学長就任。



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