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トップに聞くグローバル教育の行方

Top向学新聞トップに聞くグローバル教育の行方>内田勝一氏(早稲田大学副総長)×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)

内田勝一氏(早稲田大学副総長)        
×佐々木瑞枝氏(金沢工業大学客員教授)
 


1万人の外国人学生受入れへ  
学部学生全員海外留学が目標

 早稲田大学創設者の大隈重信は政治家として活躍しながらも、教育に情熱を注いだ人物であった。早稲田大学創設以前にも英学塾「致遠館」を開き、英語の教鞭を取っていた。そのグローバル教育は今も受け継がれて多様な人材を輩出している。今回は早稲田大学の内田勝一副総長に金沢工業大学の佐々木瑞枝客員教授がお話を伺った。


(佐々木) 早稲田大学は、21世紀に入りグローバル化を推進して「日本のワセダから世界のWASEDA」への飛躍を標榜しているようにお見受けします。まず、現在の外国人留学生の受入れ状況についてお聞かせください。

(内田) 2013年5月時点での数字ですが、4415名の外国人学生を受け入れており、これは全国の大学の中でも最大数となります。2018年には全学生の20パーセントにあたる8000名、2032年には1万名まで増やすことを目標としています。2004年に英語による学位取得が可能な国際教養学部を設置し、留学生受入れの拠点ともなりましたが、現在は全学的に英語でのプログラムを増やしています。また2005年には北京大学・復旦大学・国立台湾大学・シンガポール国立大学・コロンビア大学とのダブルディグリープログラムを開始し、今後さらに発展させる予定です。留学生への日本語教育プログラムもより充実化し、卒業時には一定レベルの日本語能力を習得できるようにしています。

(佐々木) なるほど、壮大な目標ですね。全学生の20%を外国人留学生が占めることになると、世界トップレベルの大学に近い比率ですね。

(内田) 大学は今後、国内とか国外というような区別はなくなっていくと思います。産業界では既に、海外での製品製造や、海外売り上げ比重の増大、海外現地法人でも日本人ではなく現地人がマネジメントを担っているなど国境がなくなってきています。本学でも、外国人教員の割合を2割にする目標や、日本人学生も2022年度までには全員を海外に派遣する目標を掲げて、グローバルキャンパス化を推進する予定です。外国人留学生の国・地域別割合をみると、中国人が48%で全国平均よりやや少なく、韓国人は23%で逆に全国平均よりも多くなっています。続いて台湾が6%、米国が4%など、全世界から留学生が集っており、キャンパスの雰囲気も昔のバンカラなイメージから随分変わっていると思います。

(佐々木) グローバル化にあたって、大学カレンダーの改革や議論が活発になっていますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

(内田)本学では今年度からクオーター制を導入しました。クオーター制とは従来のセメスター制(2学期制)の各学期をさらに分割したものです。春学期前半(第一Q)は4月1日~6月7日、春学期後半(第二Q)が6月8日~8月2日、秋学期前半(第三Q)は9月21日~11月24日、秋学期後半(第四Q)が11月25日~2月5日となっています。この第二Qと夏休みを併せると3ヶ月以上あり、多種多様なプログラムを実施できます。米国等海外の学生も参加しやすいですね。日本人学生も海外で実施されるサマーセッション等の短・中期留学やボランティア活動にも参加しやすくなります。また、学生だけでなく研究者同士の交流も存分に行えます。

(佐々木) 外国人留学生が増加することで、「世界」に対する日本人学生の意識にも良い影響を与えるのではないでしょうか。

(内田)そうですね。最近よく、日本の学生が内向きになっていると言われていますが、先日学内でアンケートをしたところ、8割の学生が留学に行きたいと回答し、7割の学生が将来海外で働きたいと回答していました。早稲田の学生は結構視野が外に向いているようです。ビジネスもグローバル化が進む現在、もしも日本語しかできなければ日本国内でしか働けません。例えばアジアでビジネスをする場合、中国人や華僑との関わりはますます重要になるでしょう。世界共通語として英語は不可欠ですが、それに中国語もできれば幅がぐっと広がります。昨年度、本学から125名の学部生が中国へ1年以上の長期留学に行きました。この数字は相当多く、例えば東大や慶應大の学部生で中国へ1年以上の長期留学に行く学生はこれより少ないと思います。こうした学生たちは日・英・中の3ヶ国語を扱えるようになります。一方で早稲田に来た中国の学生も英語と日本語を習得し、やはり3ヶ国語ができるようになります。他にも米国や韓国など約70の国々へ学生を派遣し、基本的に英語プラス現地語の習得を目指して幅広い交流ができるように様々な機会を提供しています。最終的には、日本人の学部生全員留学・年間8000名を海外に派遣するという目標を掲げています。こうして形成される人脈・ネットワークは将来、学生本人はもちろん早稲田や日本のためにも大きな財産になるだろうと期待しています。

(佐々木) 全学的な外国人留学生の受入れと日本人学生の海外派遣への取組みはとても素晴らしいと思います。ところで早稲田大学の目指す人材育成像とは何でしょうか。

(内田)1913年に示された大学教示にある「一身一家、一国の為のみならず、進んで世界に貢献する」人材に育てることを目指しています。そのため学生には、広い国際的教養や異文化理解力といった「叡智」、チャレンジ精神や奉仕の心といった「志」、そして本質を見抜く洞察力ややり遂げる力といった「実行力」、この3つを身につけてほしいと思います。

(佐々木)特に外国人留学生には先祖から受け継がれてきた日本の良さを学んでほしいですよね。今年の夏、ある女性が駅で電車とホームの隙間に落ちてはさまってしまいましたが、通勤ラッシュの時間帯に大勢の人が一緒に電車を押して女性を救出したというニュースが海外でも報道されました。タイの友人は「日本は何てすごいんだ!」と驚いていました。

(内田) 3・11での日本人の規律の良さも世界は驚いていましたよね。なぜ海外の人が日本に来るのかと言えば、やはり科学技術やビジネス、日本社会の安定性などです。そういったポイントを更に強化して日本の魅力を伝えていくべきでしょう。

(佐々木)そうですね。今回は大学改革の旗手ともいうべき早稲田大学の取組みがよく分かりました。本日は貴重なお時間をどうもありがとうございました。
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うちだ かついち 1977年3月に早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。同年4月から早稲田大学法学部専任講師を務め、以後同学部の助教授、教授、国際教養学部教授、同学部長等を歴任し、2008年副総長に就任。



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