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ヘアコンタクト  


貼り付けて頭皮と一体化  汗も逃がし薄さ0・03ミリ


 今月は、「ヘアコンタクト」を開発した、株式会社プロピアの保知宏代表取締役にお話をうかがった。


カツラではない新商品


――「ヘアコンタクト」を開発した経緯について。
 保知 基本的なことから言いますと、薄毛に悩んでいる人の割合は日本、欧米等といった先進国地域の場合大体10~20%の間で、平均すると18%ぐらいは薄毛の人がいる可能性があります。薄毛は男性に限らずどの人にとっても自分にふりかかるかもしれない問題で、円形脱毛症という病気やケガ、火傷で毛を失った方、抗がん剤や強い抗生物質を投与して抜けてしまう方もいます。薄毛の悩みを解決できず困っている人はかなりいるのです。
 私は1989年に、あるフランチャイズとしてカツラ業界に入りましたが、講習のとき商品を見て本当に驚き「この商品を売るの?」と思わず言いました。現在売られている普通のカツラは、厚い素材の上に髪を手で植え、それをピンやテープや糊で頭に止めるというもので、この形は半世紀も変わっていません。しかし講師は「髪の毛がない人にとってこれは最高の体の一部なのだ」というのです。供給者の目線でしかものを考えていない。「義足でも、なければ困るのだから付けなさい」と言っているのと同じようなレベルで、驚きました。
 それで私はカツラではない、まったく新しい商品を作ろうと考え、まず素材を薄くすることからスタートしました。薄いものを実際頭につけるとなると、両面テープでは生え際に段差ができてしまうので糊を使うしかないのですが、その場合汗が一番の問題になります。人間は寝ている間にコップ一杯汗をかくといわれており、起きている間にも汗をかくわけですから、その汗を逃がしてあげないと痒くてどうしようもなくなります。そこでわれわれは、微粒子をつぶして、透過性があり皮膚と同じような多孔性構造をもつ0・03ミリの極薄フィルムの開発に取り組み、それを作ることに成功しました。さらにそのフィルムに機械で穴を開けて植毛する技術も独自に開発しました。一番苦労したのがこの植毛です。0・03ミリの薄さでは穴を開けると普通破裂するのです。それに糸を通し、さらに糸が抜けないような細工もしなければならない。ゆっくり手作業したらできるのでしょうが、髪は手のひらサイズでも2万本は植わっており、手作業して時間をかけてはいられないので、全部機械化することにしたのです。
 さらにそのフィルムを頭皮に固定する吸着剤を、大手化学メーカーの協力を得て開発しました。この吸着剤が頭皮の汗を全部吸い上げてフィルムの外に出してくれるので、長時間つけていても苦にならず、つけていることすら忘れてしまいます。フィルムは汗を吸うとオブラートと同じように透明になって頭皮と一体化してしまうので見てもわからず、シワがあればそのとおりにシワになります。いったん貼れば5㎏の力で引っ張ってもはがれませんので頭も洗えますし、取りたい時には専用のスプレーを一吹きするだけで外れます。これはもう従来のカツラと少し違うというレベルではなく、メガネとコンタクトレンズくらいの違いがあるのです。カツラは60~80万円しますが、ヘアコンタクトは1万2000円程度の使いきりタイプで、月に2回程度交換します。製品は全てコンピュータでお客様に合わせオーダーメイドで作っていますから、出来たものの剥離紙をはがして頭皮に貼り付けるだけでいいのです。特に、生え際のM字部分などは一番気になる所であるにもかかわらず、対処方法が何もありませんでしたが、そのどうにもならなかったものをどうにでもできるようになったという点では画期的です。


「取れる」悩みを解消


――従来のカツラを使い続けてきた人にとっては革命的ですね。
 保知 その通りです。従来は隠せても、その次の日から今度はいつ触られるか、風で飛ぶのではないかという不安が付き物でした。かといってその他の選択肢もないので、つけている人たちは苦しんでいたと思います。実際お客様からのクレームで一番多かったのは「取れる」という悩みでしたから、その悩みを解消するために様々な開発を繰り返してきたのです。
――お客様からの反響はいかがですか。
 保知 あるテレビ番組でヘアコンタクトが紹介されたのを見て、東北から60歳の方が上野支店に来られました。その方は火傷で鬢の部分が無いのです。それで、はさみでその鬢の形を抜いてつけてあげたところ本当に泣いて喜んで、「神様からのプレゼントだ」とおっしゃったのです。そういう声が続々と上がってきており、お客様には非常に喜んでもらえる商品だと思っています。
 また、ヘアコンタクトは髪のおしゃれやスタイリングにも活用できます。例えばカラーコンタクトレンズなどは目が悪くない人でも使うようになっていますが、同様にヘアコンタクトもカツラの代わりだけのものではないのだという意識が定着すれば、薄毛の方たちも抵抗なく気軽に使えるようになると思います。われわれは、カツラは隠す商品、ヘアコンタクトは遊ぶ商品と思っています。休みのときにモヒカンで、仕事に行くときには七三分けでということさえもできてしまうのです。