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唐 巍立さん(中国出身) 
(株式会社GBA代表取締役) 


基本は人を尊重すること
企業はオープンな姿勢で

――起業しようと思ったきっかけは。
  私は2007年に会社を立ち上げましたが、実はそれまで起業しようと思ったことは一度もありませんでした。6年間の日本留学の中で、日本の企業文化や管理体制は世界でトップレベルにあると感じ、その中で自分も成長したいと思って卒業後は日本企業に就職しました。
  日本企業の最大の長所は人を育てるところです。この点で私は、以前いた会社に本当に感謝しています。私は会社が嫌でやめたわけではなく、会社にいてこれ以上自分が成長できるのかという観点から次のステップを考え起業しました。何年か働いて不満を持ちやめてしまう人もいますが、仕事が自分に合わないなら「こういう仕事をこういう理由でやりたい」と本気で言えばいいのです。勤務態度など基本がクリアできていれば会社も考えてくれるでしょう。会社と個人で方針が違うのは当然です。大きな方針に従う中で次のステップを目指すときに、自分の専門と合う流れが来ることがあります。特に大企業は多種多様な事業を行っていますのでチャンスは必ずあるはずです。そのとき手を挙げて「こうしたい」としっかり言えるかがポイントです。

――自分の心の「オープン度」が大切ですね。
  外国人は日本人の良い点を真剣に受け入れるべきですし、日本企業のほうももっと積極的にオープンな姿勢を取るべきです。閉鎖性・排他性が根強く残っていて外国人を採用しない企業もいまだにあります。確かに多国籍のメンバー間では衝突がつきものですが、人間は兄弟でさえケンカするのですからそういうものです。基本中の基本は「人を尊重すること」であり、そのベースがあってはじめて調整も可能になります。実際、私は一緒に働いている人と事業についてケンカすることはありますが、あくまで事業についてのケンカです。むしろ本音を言ってくれない状態のまま間違った判断をしてしまうことのほうがよほど大変です。ケンカして「やっとあなたという人がわかった、あなたの意見は正しいですね」となった上で進めればうまくいくはずですし、一層信頼関係も増すのです。
  私がよく言うのは「枠を作らないでほしい」ということです。私自身、国の枠を超えたグローバルな人材になりたいので、日本にいるからといって完全に日本的な考え方で仕事をしようとは思いません。しばらく日本にいると日本と母国の長所・短所が自然にわかってきます。グローバルな人材は、そういった日本と外国という枠を越えた一つ高い視点から、人間として客観的に物事を判断できる人だと思うのです。ですからニュースを鵜呑みにすることなく、事情はどうなのか自分の目で確認するよう心がけています。毎月海外出張するたびに、現地の人々の考えや事情が肌でわかります。それを理解したうえで付き合ってはじめて「こういう方法でやりましょう」と提案もできます。
  ただお金を儲けようとしてもうまくいきません。まず、その事業を通して社会に貢献でき、自分にとってもやりがいがあるような、夢のある事業であることが大切です。その上で、ビジネスの相手である会社や人と長く付き合いたいという気持ちの上に発展があり、互いにメリットが見いだせれば利益は自然についてくるものだと考えています。