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段 瑞聡 氏 
(慶應義塾大学 商学部助教授) 


宿舎整備には政府の支援も必要  日本の真の姿知る人材育てよ

 ――留学生受け入れにおける日本の課題とは
 留学生の生活の質と学力の質の両方を向上させる必要がありますが、生活面の支援においては特に寮の整備が必要です。現在日本のほとんどの大学では海外大学との交換留学を行っていますが、留学生を派遣されても受け入れるための寮が不足しています。留学生が家賃を自分で払うのは特に首都圏ではなかなか難しいことです。しかし文科省の調査によると、現在留学生の76%が民間のアパート等に住んでいます。民間宿舎は保証人の問題が付いてまわりますので、留学生にとっての精神的負担は大きいものがあります。したがって宿舎の整備は留学生受け入れ大学にとっての早急の課題なのですが、これは各大学の努力のみに頼っていては限界がありますので、政府の支援も必要です。例えば、企業の余っている社員寮を大学に提供させるような、政府側からの働きかけをさらに強化することが必要でしょう。

――日本にいる留学生に学んで欲しいことは。
 日本人の美徳として「人に迷惑をかけない」ということがあります。これはぜひ留学生には学んでほしいと思います。また、日本がこれだけ発展できた理由が何なのか考えてみると、やはり戦後に日本人が一生懸命働いたからです。中国などは最近経済的に発展してきていますが、北京や上海で育った子供たちはあまり田舎の状況が分りませんので、農村部も全部同じ状況だと勘違いしている面があります。それは非常に危険で、偏った自信とナショナリズムを生み出してしまう可能性があります。4月のデモはまさにその表れでしょう。インターネットなどには無責任な発言があふれています。本当の日本の姿を知らない人はそれをそのまま受け入れてしまい、日本に対する悪いイメージが出来上がってしまっています。
 しかし中国はまだ発展の度合いに見合った実力を身に付けているわけではありません。日本に学ぶものがないと思う若者が増えてきていますがそれは誤解であり、実際に来て日本人と触れ合ってみれば日本の真の姿が分るのです。
 現在日本の外務省では、海外の若手官僚を日本によんで研修してもらうプログラムを実施していますが、参加者に聞いてみると「たった1年で日本に対するイメージが変わった」「様々な意味で日本は魅力的な国でもっと謙虚に学ばなければならない」という話が出てきます。このように本当の日本を知る人材を育てる必要があのです。留学生が母国に帰って様々な分野で仕事に就き、日本で体験したことをまわりの人々に話せば、日本に対する理解が深まっていき、国際社会における日本のイメージ改善につながっていきます。ですから留学生の受け入れはこれからもどんどん拡大していく必要があると思います。
そのためにも、例えばもう少し国費留学生の奨学金の金額を減らして、支給人数を増やすべきではないでしょうか。初任給に相当するような18万円もの奨学金をもらって、さらにアルバイトをしているような学生もいますが、これでは何のための奨学金か分らなくなってしまいます。むしろ半額にして2倍多くの人がもらえるようにするほうが良いでしょう。そのようにして、多くの留学生が来日後に本当に充実した勉学生活を送ることができるようにする必要があると思います。


だん・ずいそう
中国生まれ。内蒙古大学外国語学部卒。1990年財団法人大内山塾に留学。1999年慶應義塾大学大学院修了。杏林大学講師、慶應義塾大学商学部専任講師を経て、2003年より現職。法学博士。専門は中国近現代政治史、日中関係史、現代中国政治。