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向学新聞2025年1月号目次>日本で働く元留学生たち イヴァ ペトコヴィチ さん

<向学新聞2025年1月記事より>
日本で働く元留学生たち
イヴァ ペトコヴィチ さん
(セルビア出身)
大塚倉庫株式会社
インターンシップで自分の価値観や適性を確認
―日本留学のきっかけを教えて下さい。
小学校のころから、日本に興味を持っていました。最初のきっかけはアニメですが、その後、日本のドラマや映画を観たり、本も読みました。本は村上春樹の本が好きです。私たちの世代は、小さいころからインターネットがあったので、インターネットでドラマや漫画が翻訳されて英語字幕が付いているものをよく見ていました。セルビア語で吹き替えのアニメもありましたがそれは好きではありませんでした。日本語を聞いて、なんてかわいい言語だ、と思いました。
セルビアの大学の日本語学科に行った親戚がいましたが、そのおばさんはせっかく日本語を学んだのに、その後日本を使う機会がありませんでした。その様子をみて、私はセルビアの大学の語学学科ではなく、日本で生活しながらビジネス系の勉強をしたいと考えました。
神戸大学経営学部卒、2022年4月から現職。
総務人事部(兼)サステナブル推進室。
―留学前に、日本留学に関する情報を得ることに困ることはありましたか。
今はインターネットでたくさんの情報を得られるので、日本に留学をしたくて情報を必要として求めている人は、情報を見つけられると思います。私は高校3年生の時に、大使館の方が学校に来て文科省の奨学金の紹介をしてくれたことが留学の背中を押されました。
日本にはすでに多くの外国人が住んでいて、その目線からみた日本社会や日本での生活のことを多く発信しているので、日本での生活に関する情報は多いと思います。アニメなどのポップカルチャーしか知らずに来日すると、具体的な生活面でのカルチャーショックがあるかもしれませんが、現代の日本社会ではどのようなことが求められているか調べれば情報はあるので、見つけられると思います。
―来日してからの生活はいかがでしたか。
来日して最初の1年は日本語学校に通いました。人生の中で一番楽しく忙しい1年でした。その後は神戸大学に進学しましたが、この時期は一番辛かったですね。日本語の基礎は身にいていましたが、まだまだ日本語レベルが高くなかったので、日本人学生との交流や、授業を理解することが簡単ではありませんでした。先生の話だけでは理解できないので、色々なことを周りの学生に聞くので、周りに迷惑をかけていると感じました。日本語を書くことも未熟だったので、授業やテスト問題はみんなと同じ日本語でしたが、先生に許可をもらって、アウトプットはいつも英語でした。
友達関係では、海外に行きたいとか、英語力を身につけたいと思っている日本人学生と、日本語と英語を混ぜながら会話をして、交友関係を作りました。入学当初は苦労した時期でしたが、そのような友達の存在はありがたく感じました。
また、人間関係の面でカルチャーショックを受けたのは、日本人学生はほとんどが男女別々に行動している事です。食堂でもほとんど男女別でしたね。また、グループを混ぜません。部活の友達、高校からの友達、などのグループの属性があって、それぞれが混ざらないのがとても不思議に感じました。私は特に色々な人と会って知り合いたいと思っていましたが、部活に入らないと出会いや仲が深まる機会がなく、壁を感じたこともありました。セルビアではコーヒーを一緒に飲みに行く文化がありますが、男女仲良く一緒に行ったり、友達の連れてきた人と友達になれる機会も多いです。
―イヴァさんは、現在、採用の担当もされています。日本で働きたいと考えている留学生に、アドバイスをお願いします。
一つ目は、私の体験から、インターンシップに参加することをおすすめします。自分の価値観や適性を確認するための重要な機会です。私が三回生だった2020年は、ちょうどコロナ禍の時期だったため、キャリアセンターを活用したり、友達と情報交換する機会がありませんでした。自分が何をしたいのかが分からなかったので、インターンシップをしたいと考えて、二社のインターンシップに参加しました。
一社では五か月と長期間参加しました。長期間会社の中で実践してみると、色々なことが見えてきます。自分はどういう環境で働きたいのか、何を重視するのかは、体験してみないと自分でも分からないと思います。インターンシップを通じて、私は、他部署とも顔見知りで関わりのある環境で働きたいのだなと、自分の希望を再発見しました。インターンシップをした二社のうちの一社が、今働いている大塚倉庫です。インターンシップで、ある程度会社の中の雰囲気が分かっていたので、自分に合うと感じ入社を決めました。
―体験を通じて自分の希望や適性が再発見されることが、インターンシップの良さですね。
二つ目に、キャリアセンターを活用したり、友達・先輩・先生など、アドバイスをもらえる人を見つける事も大事です。しかし「自分の価値観」がないと流されてしまうことにもなるので、まずは自分の価値観をしっかりと持っておいてください。
これは会社に入社してからも大事なことだと思います。会社にいれば、仲の良い同僚や尊敬する先輩が退職してしまうこともあります。その時に、自分自身の価値観や、仕事に対する愛情や自分のビジョンや目標がなければ、環境や周りの人に依存する気持ちになり、「あの先輩が辞めたから自分も辞める」となってしまいます。環境に対して受け身の姿勢ではなく、「自分がこの環境でどのように活躍できるか」と主体的な姿勢で取り組んだ方が楽しいと思います。
―その他、気を付ける点はありますか。
企業の事業内容や仕事内容について理解不足の学生がたまにいます。当社の例ですが、当社は物流業界ですが、事業は日本国内がほとんどです。しかし、面接で「国際物流がしたい」「母国との橋渡し役をしたい」と言われると、理解が足りていないなと感じます。志望する前提の情報が不足していたり、認識が誤っていると、入社後にギャップが生じる可能性があり、お互いにとって不幸な結果に繋がりかねません。
会社にもよると思いますが、当社の選考は面接を重視しています。企業側から見ると、応募書類の「志望動機」「自己PR」は、みな同じような内容に見えます。ですから、書類だけでマッチ度を見るのはとても難しいです。直接お会いして、志望の度合いや人柄、コミュニケーション能力などを見させてもらっています。
―雇用する企業側の視点として、社員が長く働きたいと思える環境整備は、どのような事がポイントになると思いますか。
働く環境で無くてはならないものが、「互いの意見の尊重」「意見を言える、議論できる関係・雰囲気」だと思います。「あなたは新入社員だから、外国人だから」と、発言の機会を与えない、言えない雰囲気は絶対に良くないと思います。他に、キャリア面談やキャリアシンキングの機会も大切だと思います。
しかしこれは、会社だけの責任ではないと思います。先ほど述べたように、社員側の主体的な考え方や仕事での目標を持つことが、幸せややりがいを感じたり、その環境を好きになるために必要な要素だと感じます。
―最後に、後輩たちにメッセージをお願いします。
自分がその環境でどのように生きたいか、何を求められているかをしっかり考えて、自分のモチベーションにして下さい。環境に依存して求めるよりも、そのような意識で就職活動やその後の仕事に向かっていく方が、ずっと楽しいし幸せに感じると思います。また、人に関心を持って人と話すことも大切です。「自分は留学生だからできない」と限界を決めないで、ぜひ、目標を高く広く設定して様々なことにチャレンジしてみて下さい。
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