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留学生の就職支援第17回 対談⑯ 「将来への投資としてのインターンシップ」

現場の声を聞く

栗原由加 氏

栗原由加 氏
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部 教授
キャリア教育センター副所長

加藤冬華 氏

加藤冬華 氏
大阪府 商工労働部 商工労働総務課 調整グループ

中小企業の人材不足解消のために、自治体でも様々な取組がされている。大阪府は、2022年から企業の外国人材採用支援に力を入れている。今回は、企業と留学生を対象としたインターンシップ事業を中心に、大阪府商工労働部の加藤氏にお話を伺った。(以下、敬称略)

◆大阪府の事業
(栗原)人材不足や外国人雇用の問題は、地域によって事情が異なりますので、自治体ごとに工夫されていることだと思います。大阪府が企業への支援として取り組んでいる、外国人材採用の事業について、教えてください。

(加藤)全国的な傾向と同様に、大阪府でもあらゆる業界で人材不足の状況です。特に製造、建設、そして宿泊や飲食などのインバウンド関連の業界などにおいて人材不足感が顕著で、外国人材の採用を検討する企業が増えている印象です。一方で、外国人材の採用経験がない中小企業においては、採用に必要な情報や外国人材と出会う機会が不足しており、なかなか受入れが進まない状況もあります。そこで、大阪府では、企業向けに外国人材採用に関するセミナーや留学生等との出会いの機会を提供する事業を行っています。

令和4年度には、大阪産業局を窓口として、府市合同で「大阪外国人材採用支援センター」を開設しました。本センターでは、府内企業の採用支援を目的に、外国人材の採用に関する相談からマッチングまでをワンストップでサポートしており、専門家が相談内容に応じて適切な支援機関につなぐなど、スムーズな支援体制を整えています。現在では連携機関が70以上になり、大阪出入国在留管理局など公的機関のほか、民間の人材系の企業や教育機関などと連携しており、幅広い相談に対応することができます。

令和5年度からは、「外国人材受入加速化支援事業(MEET IN OSAKA)」を実施しています。この事業では、オンラインマッチングシステムの活用や合同企業説明会の開催により、府内企業と留学生など国内の外国人材とのマッチングの場を提供しています。オンラインマッチングシステムは、登録企業と留学生等がお互いを検索したり、面談リクエストなどのコンタクトを取ったりすることができるプラットフォームです。例えば、システム上で面談の約束をして、対面合同企業説明会の日に面談を行うといったことも可能です。合同企業説明会は、今年度は計9回、10月以降では残り5回、対面もしくはオンラインで開催予定です。

また、この事業を行う中で、採用後の定着の課題が見えてきました。そのため、昨年度から定着支援を強化し、内定を受けた外国人材同士や採用企業同士がつながるコミュニティの運営も行っています。

さらに、昨年度からは、新たに海外在住の外国人材と府内企業をオンラインでつないで合同企業説明会を行う「海外版MEET IN OSAKA」も始めました。今年度は、インド、インドネシア、タイ、ベトナムの4か国が対象です。世界的に人材の獲得競争が激化している中で、大阪が「働くまち・成長できるまち」として、企業とともに海外の人材に直接アピールすることを目的に実施しています。

そして、今年度から新しく「外国人留学生インターンシップ活用チャレンジ支援事業(TRY in OSAKA!)」を始めました。外国人材の採用実績がない企業に最初の一歩を踏み出していただく目的だけでなく、採用実績のある企業においても、人材との相性や適性を見極める機会をもっていただけるよう始めたものです。中小企業にとっては、採用後に早期離職が発生すると経営上の影響が少なくありません。インターンシップは、お互いに理解を深め合うための貴重な機会です。

(栗原)お話を伺って、大阪府が企業の外国人採用支援に取り組んでこられた歩みがよくわかりました。TRY in OSAKA!について、少し詳しく教えていただけますか。

(加藤)まず、企業と留学生のマッチングのために、インターンシップフェアという合同企業説明会のようなイベントを実施しました。対面開催で、留学生は全体セミナーで出展企業の紹介を聞いてから企業ブースを回ります。

印象的だったのは、参加する留学生の意識が想像以上に高かったことです。合同企業説明会のようなイベントでは、開始後数時間してから参加者数が増えてくるイメージだったのですが、本イベントでは、開始時刻にほとんどの参加者が会場を訪れ、全体セミナーに参加していました。セミナーでは積極的に手を挙げて発言する留学生もいて、インターンシップに対する強い意欲を感じました。

インターンシップフェア
インターンシップフェアの様子

また、本事業は全学年を対象としているのですが、就活がまだ先の1、2年生から、就活中の3、4年生までまんべんなく参加いただき、日本語力もN1やN2の比率が高く、日本での就職を真剣に考えている留学生が多かったです。

インターンシップの実施時期は、夏休みの8月~9月と、春休みの1月下旬~②月下旬頃の2回です。専門の事業者が、企業のニーズや留学生の専攻などをみてマッチングをしていきます。夏の回では、参加企業約30社に対して、多くの留学生がマッチングし、インターンシップに参加いただいています。当初は1社あたり1、2名の受入れを想定していましたが、1度に5、6名を受入れる企業もおられたのが驚きでした。

◆現場の声を通して見えてくるもの

(栗原)TRY in OSAKA!を実施したことで、見えてきたことはありますか。

(加藤)私も、実際に数社のインターンシップを見学させてもらったのですが、やはり現場で当事者の声を聞くと、気づきがとても多かったです。ある留学生からは「実際に機械を使って金属を加工する作業の経験ができ、社員にも優しくしてもらって、とても楽しかった。5日間では短く、2週間くらいやりたかった。」との声をいただきました。

企業側からは「社員を1名メンターとしてつけたが、通常業務の合間でインターンシップを実施するのでやはり少し負担がある」「会社として外国人材を受入れる際の課題点が見えた」などの感想がありました。また、社員とインターン生の間で、「どのようにすれば、若手人材が当社に興味を持つか」「会社に来ればその暖かい雰囲気と魅力が分かったので、会社のことをもっと発信してはどうか」などのやりとりもありました。

インターンシップ
インターンシップ参加留学生と受入れ企業

インターンシップの実施日数については、企業ごとに事情が異なり、目安の5日間は長く負担に感じる、という声もある一方で、もっと長期を希望する声もあり、様々でした。

(栗原)確かに、外国人採用に関心がある企業は、学生に実際の仕事を見てほしい、社員に外国人と一緒に仕事をする体験をしてみてほしいといった要望をお持ちです。とはいえ、いきなり5日間のインターンシップを実施するのはハードルが高いのも事実です。そうであれば、今後の展開として、インターンシップとオープンファクトリーの中間の、1日から数日のジョブシャドウイングのような方法も考えられるかもしれません。現場の声を聞きながら、次のステップに向けて事業を発展させていく方法は、現実的で実効性のある進め方だと感じます。

◆インターンシップという「種まき」

(栗原)中小企業でインターンシップを実施する意義については、もう一つ、面白い観点があります。それは、留学生が卒業後にインターンシップ先以外の企業に就職しても、インターンシップの経験が本人のその後の職場選びに影響を与え続けるということです。つまり、転職を検討する際は、その企業が候補に残り続けます。

2027年から育成就労制度が導入されることも含めて、日本での外国人労働者の働き方は今後大きく変わります。外国人労働者のキャリア構築という概念も、その一つです。日本人、外国人に関わらず、長期的に働くのであれば、人生の節目で働き方や勤務先を変える必要が生じることがあります。会社の仕事内容や雰囲気を知っていることは、会社選びの重要な判断材料になります。インターンシップを新卒での採用だけに直結させて考えるのではなく、地域の発展、将来的な投資という、より広く長い視点で考えると、インターンシップの意義について、別の側面が見えてくるのではないかと思います。

(加藤)確かにそうですね。今回インターンシップに行った留学生も、その会社の良さが分かったので、友達にも参加を勧めたと言っていました。留学生同士の口コミで会社の評判が広がることはよくあると聞きます。将来の人材獲得のための種まきにもなりますね。

(栗原)「良い企業」の定義は、一律ではありません。外国人労働者について言えば、就職先に特に求める要素として「経営者が良い人で話しやすいか」「自分の技能や知識を活かせるか」「母国の人が働いているか」「人間関係が暖かいか」など、日本人労働者とは価値観の優先順位が異なる点があります。中小企業でのインターンシップは、企業の個性を留学生が知る機会として有効です。その体験がいつ、どのような形で効いてくるのかは、今後、日本の外国人労働者受け入れが進む中で明らかになるだろうと思います。

(加藤)そうですね。大阪にはたくさんの企業があります。外国人採用の必要性は感じているものの、まだ踏み出せていない企業もいらっしゃいます。そのような企業にこそ、本事業を活用してほしいと思います。夏のインターンシップの成果がわかるのはもう少し先ですが、引き続き、企業と留学生双方のニーズをしっかり捉えて、一歩踏み出すことを後押しできるよう、事業を展開していきたいです。


・留学生の就職支援
 第1回「現場から見える課題」
 第2回 企業の視点、大学の視点 対談①
 第3回 「仕事ができる人」とは? 対談② 
 第4回 対談③在留資格の注意点
 第5回 対談④キャリア相談とは
 第6回 対談⑤留学生の情報源
 第7回 対談⑥重視する点は知識ではなく、培ってきたこと
 第8回 対談⑦地域連携の中での留学生支援
 第9回 対談⑧インクルージョンについて考える
 第10回 対談⑨中小企業のマッチング
 第11回 対談⑩製造業の人手不足
 第12回 対談⑪外国人の定住
 第13回 対談⑫社員視点での職場環境づくり
 第14回 対談⑬中小企業と学生は、どうすれば知り合えるのか
 第15回 対談⑭外国人社員の労働環境」
 第16回 対談⑮外国人労働者が働く仕組みを整える」
 第17回 対談⑯将来への投資としてのインターンシップ
 第18回 対談⑰外国人労働者が働く仕組みを整える」

 

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