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留学生の就職支援第18回 対談⑰ 「働きやすい企業を発見し公表する仕組み」

多様な人材の活躍を目指して

栗原由加 氏

栗原由加 氏
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部 教授
キャリア教育センター副所長

田口修由  氏

田口修由  氏
兵庫県産業労働部
能力開発課課長

地方自治体による外国人雇用促進を後押しする施策が増えている。兵庫県では2023年から留学生と企業のマッチング事業などに力を入れている。今回は、新制度「ひょうごグローバル人材活躍企業認定制度」を中心に、制度の狙いと背景について、兵庫県産業労働部能力開発課の田口修由氏にお話を伺った。(以下、敬称略)

◆兵庫県の現状と外国人関連施策
(栗原)最初に、兵庫県が外国人材施策に本格的に取り組み始めた背景について教えていただけますか。

(田口)兵庫県は、歴史的にも外国とのつながりが強く、県内在住の外国人が年々増加しています。現在県内外国人は約14万8000人(令和7年6月末時点)、過去5年で約1・3倍と増加しています。そのような中で、県としては国籍に限らず、すべての方が安心して暮らせる多文化共生社会の実現を目指しています。
 一方で、足元の課題として、企業の深刻な人手不足の問題があります。少子高齢化の影響は大きく、外国人材の雇用を目指す中小企業も増加傾向にあります。県内の学校で学ぶ外国人留学生も増加傾向にあります。そこで、2023年に「人手不足問題対策会議」を立ち上げるとともに、外国人雇用に関心のある企業の相談窓口や、留学生と県内企業のマッチングを図る合同企業説明会を実施してきました。

(栗原)そういった状況での、兵庫県の外国人雇用・活躍促進に関する施策には、どのような特徴がありますか。

(田口)兵庫県の施策では、「手広く」「手厚く」をキーワードにして事業に取り組んでいます。2023年から外国人留学生向けの合同企業説明会を開催し、県内企業と留学生のマッチングの機会を提供しています。2025年の合同企業説明会は、製造業を中心に様々な業種の企業が76社参加し、当日は約1700名の留学生が来場しました。

今年は新たな試みとして、10月にベトナムのホーチミン工科大学のキャリアフェアに「HYOGOストリート」と銘打って、県内企業15社が出展しました。会場では、各企業ブースでの会社や仕事内容の説明はもちろん、兵庫県ブースで、県の魅力や住環境を紹介しながら、学生の皆様に兵庫で生活して働くイメージをしてもらえるよう工夫をしました。兵庫県は、山も海もあり、魅力的な場所です。

企業側への支援としては、「外国人雇用HYOGOサポートデスク」を設置し、企業からの相談を受けたり、内容によって必要な機関につなげたり、といったサポートをしています。

02 留学生向け合同企業説明会
留学生向け合同企業説明会


ひょうごのキャリアフェアinベトナム
ひょうごのキャリアフェアinベトナム


インターナショナルジョブフェア東京
インターナショナルジョブフェア東京

◆ひょうごグローバル人材活躍企業認定制度

(栗原)今回新たに始まった認定制度について教えてください

(田口)「ひょうごグローバル人材活躍企業認定制度」というもので、外国人も安心して就職し働けるよう就労環境が整った企業を県が認定する制度です。
制度設計のために企業等50社以上にヒアリングをしましたが、自社の取り組みを知ってもらう機会として期待する声が非常に多かったです。第三者機関を通じた認定を受けることで、社会的な評価・信用につながりますし、県のウェブサイトで企業名や取組状況を公開しますので、学生に知ってもらうチャンスが増えます。学生にとっても、働きやすい環境が整った企業を発見できる機会となります。大学のキャリアセンターからも、「県の認定を受けた企業であれば、留学生に積極的に勧められる」と期待する声を多くいただきました。

(栗原)外国人留学生に限らず、日本人学生からも、働きやすい企業を探したいけれど、応募する企業を選ぶ時のとっかかりや基準、見るポイントが分からないという声は多いです。このような仕組みがあると、非常に助かると思います。

「良い企業」の基準は、人生のステージや環境などで異なりますし、地域によって魅力や事情も異なります。自治体主導で、働き手が自分にとって良い企業を発見できる仕組みを整えることは、とても価値があることだと感じます。

◆認定の基準

(栗原)認定のためのチェック項目には、どのようなものがありますか。

(田口)法令順守、募集・採用、労働環境、エンゲージメントの向上など、6分類全18項目があります。18項目中15項目以上を満たしていれば、審査会を経て認定されます。

(栗原)「認定制度」と「宣言制度」の二本立てになっている点が特徴的ですね。

(田口)はい。15項目を満たしていない企業でも、これから実施していくという意思を表明することで、宣言企業となります。現時点では満たす項目が15項目未満だとしても、良い取り組みをしている企業が多くあります。宣言企業となることでさらに前向きに環境整備を進める意識を高めていただけたらと思います。

(栗原)制度の目的は、認定されるかされないかの選別ではないということですね。「認定制度」と「宣言制度」の二本立てで、外国人の労働環境を全体的に良くしていくという方法は、画期的で現実的だと思います。

◆認定制度が目指す多文化共生社会のあり方

(田口)この制度は「外国人のためだけの制度」とは位置付けていない点が大きな特徴です。多文化共生の観点を含みつつ、女性や高齢者等も含めた「すべての人の働きやすさ」に直結する内容になっています。

県として多文化共生社会を目標とする中で、我々の労働部門では、働く環境を整えることによって、すべての労働者が幸せに働き生活できることを目指しています。本事業は様々にある施策の中の一つです。本認定制度の趣旨としては外国人を切り口・きっかけとしてはいますが、目指すところは、外国人だけではなく女性や高齢者、障害を持つ方など、事情が異なる様々な人が働きやすい環境づくりです。

(栗原)「外国人施策が目指す先は、全ての人にとって働きやすい環境づくり」という観点は、とても重要だと感じます。一部の人だけが優遇される仕組みは、長続きしないものだと思います。

兵庫県の認証・認定事業といえば、他にも「ひょうご産業SDGs認証事業」「ひょうご・こうべ女性活躍推進企業(ミモザ企業)認定制度」等が行われていますので、様々に進められている施策を俯瞰的・統合的に見る視点が大切なのだとわかります。

兵庫県の今後の方向性については、どのように考えていらっしゃいますか。

(田口)現在行っている事業を、更に拡充させていきたいです。合同企業説明会は、参加企業・留学生双方の数を増やしながら、マッチングの件数の向上を目指したいと考えています。海外のキャリアフェアへの参加も、ホーチミン市工科大学で継続実施しながら他の地域・国も検討していけたらと思います。

認定制度は今後さらに認定企業を増やしていくとともに、メリットを実感していただけるように、学生側へのアピールにも力を入れていきます。また、外国人雇用HYOGOサポートデスクは、令和9年4月に施行予定の育成就労制度を見据えた相談体制の拡充にも努めます。


・留学生の就職支援
 第1回「現場から見える課題」
 第2回 企業の視点、大学の視点 対談①
 第3回 「仕事ができる人」とは? 対談② 
 第4回 対談③在留資格の注意点
 第5回 対談④キャリア相談とは
 第6回 対談⑤留学生の情報源
 第7回 対談⑥重視する点は知識ではなく、培ってきたこと
 第8回 対談⑦地域連携の中での留学生支援
 第9回 対談⑧インクルージョンについて考える
 第10回 対談⑨中小企業のマッチング
 第11回 対談⑩製造業の人手不足
 第12回 対談⑪外国人の定住
 第13回 対談⑫社員視点での職場環境づくり
 第14回 対談⑬中小企業と学生は、どうすれば知り合えるのか
 第15回 対談⑭外国人社員の労働環境」
 第16回 対談⑮外国人労働者が働く仕組みを整える」
 第17回 対談⑯将来への投資としてのインターンシップ
 第18回 対談⑰外国人労働者が働く仕組みを整える」

 

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