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日本型スマートグリッド 



オールジャパン体制で開発   各家庭に蓄電、不足時に放出



実証事業が進行中

――東京大学の横山明彦先生に、日本型スマートグリッドの実証事業についてお伺いします。
 横山 東京大学や東京工業大学、早稲田大学、電機メーカー、電力会社など28法人が参加する「次世代送配電系統最適制御技術実証事業」が2010年からスタートし、東京大学がそのプロジェクトリーダーとなっています。この事業が目指しているのは、電力網に自然エネルギーを導入するための最適な制御システムを作ることです。


ICTで家電を制御

 電気の供給というものは、需要と供給がバランスするよう調整しなければ、ネットワーク全体の周波数が狂って発電機が止まり、停電してしまいます。その調整弁として火力発電所は無くせないのですが、火力の使用はCO2排出を削減するためにはこれ以上増やせません。今後は太陽光や風力を含めたネットワーク全体で需要と供給を瞬時に合わせるための新たな調整弁が必要になります。そこで、ICTを使って各家庭の機器を制御できるようにします。例えばヒートポンプや電気自動車、家庭用蓄電池は熱や電気を貯蔵して放出できますし、太陽光発電装置は発電をしたり、停止したりできます。これらをうまくコントロールすることで、余剰電力があれば吸収し、不足時には電気を放出できるようにするのです。
 東日本大震災の発生後、緊急時の節電にスマートグリッドが役立つ点が注目されています。現在日本の電源は不足していますが、スマートメーターを導入すれば、家で使う電気の最大量を電力会社がICTでコントロールでき、強制的に政府目標の電力需要の15%削減ができます。その代わり計画停電をしなくても済むようにできるのです。このように各家庭のブレーカーを平等にコントロールできる技術を今後入れていくことも可能です。

――プロジェクトの進捗状況はいかがですか。
 横山 現在、電力会社の中央給電指令所から太陽光発電のようすを予測して火力発電所をコントロールするシステムと、電力の過不足の信号を各家庭に送るためのシステムの開発を行っています。住宅用機器については、太陽光発電装置を入り切りしたり、ヒートポンプ給湯機の消費電力を上げ下げしたり、電気自動車の電池を充放電してうまく電力をコントロールできるかどうか、かつ家庭での利便性を確保できるかどうかを試験しながら、オールジャパンの体制で開発しています。2012年度までにはコントロールの要素技術を開発し、ゆくゆくはそれを標準化して、世界でビジネスを展開できるようにすることを目指しています。


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