フローニ・フレデリケ・カウチさん (ドイツ出身)
(東京藝術大学大学院博士課程)
相手の気持ちを大事にする日本人 喜びを形にする優れた文化
――日本文化の魅力とは。
他国の文化にはない独自の要素を多く持っていることです。特に私が強く惹かれたのは、日本の伝統的な「お茶」の世界です。ドイツでは19世紀に総合芸術の運動が起こりましたが、それは音楽や演劇、文学、哲学など同時代の文化全体を一つの大きな作品としてとらえ、表現するというものです。同様にお茶の世界も、陶器や、やり取りの作法、武士の世界の哲学など様々な要素が一体となっています。単にお茶を作るだけでなく、相手と共に一種のパフォーマンスを行っているのです。
よく、「日本とは何なのか自分たちには分からない」という日本人がいます。私は、歴史の流れを見ても日本は日本らしさを失っていないし、お茶の世界に代表される精神的風土も現代とつながっていると思います。
日本人は非常に「お客さん」に対してウエルカムな態度で接しますので、ツーリストにとっては天国でしょう。日本のマナーのレベルは非常に高いです。人付き合いの仕方がとても優しく、お辞儀の仕方やプレゼントの渡し方などを見ると、自分よりまず相手の気持ちを大事にする文化があることを感じます。
――そのような精神と行動は「礼」という言葉に集約されると思います。
そうですね。例えばおじいさんは経験豊富なので相手に何をどう与えたら喜ぶか分かるのですが、子供は与えられて喜ぶだけでマナーは身につけていません。人間の成熟度の違いはあれ、喜ぶ心は皆同じです。しかしその喜びを形にすることに関して、日本人は本当に優れた文化を有していると思います。