ヴ・クォンさん (ベトナム出身)
(慶應義塾大学商学研究科修士課程)
できる範囲で約束すること 有難い精神面でのサポート
――日本に来て感じる母国との違いはどのようなことですか。
日本人はどの仕事も差別せず、単にお金を得るためだけではない貴重な仕事として取り組むべきだと考えていますが、ベトナム人は仕事に対する高い要求にはそれほど慣れていません。ですから「日本はベトナムより社会主義的だ」と言う人もいるくらいです。
外国人留学生がよく陥りがちな誤りは、自分に合わないことを見ると嫌がることです。しかし、物事には何でも良い面と悪い面があるのであり、ありのままの日本を受け入れて尊重するべきで、どちらが正しいなどとは考えない方が良いです。まず自分の留学目標をしっかりと見据え、それから現在のことを調整したほうがいいと思います。
日本社会は良く言えばプレッシャー、悪く言えばストレスを与える社会です。実際に過労死や引きこもり、自殺が多いでしょう。例えば上司が部下に与えるプレッシャーはストレスにつながりますが、それに慣れていない人は自分ですべて受け止めてしまい、消化し切れなければその人本来の能力が発揮できません。外国人は言語の壁もありますのでなおさら悪循環に陥ってしまいます。ですから、日本で学ぼうとする後輩へのアドバイスとしては、自分のできる範囲がどこまでなのかをきちんと認識し、その範囲で約束することが大事だということです。
外国で暮らす中でストレスを感じやすい留学生にとって、一番ありがたいのは精神的な面でのサポートです。友人の存在も大きな支えとなります。日本人の友人を作ろうと思えば、まず接してみないと日本人というものがよく分かりません。ですから留学生は、最初に日本の各地を旅行したり、ホストファミリーのお世話になるなど、交流する機会を多く持つことが必要です。たとえ期間は短くても、それは日本を理解する近道ですので、少なくとも一回は体験してみてほしいと思います。