Top向学新聞今月の人裵 昌煥さん


裵 昌煥さん  (韓国出身) 
(東京工業大学大学院博士課程) 


高速・大容量の光通信技術  日本は基礎研究に強み

――研究内容について。
  私の研究は、「マイクロマシンを用いた中空導波路型光スイッチ」の研究です。光通信系の装置の中で一番重要なものの一つに、光の伝播経路を変えるためのスイッチがあります。従来のものは光を電気信号に変え、電気信号をスイッチングし、出てきた電気信号をまた光信号に変えていましので、遅延が生じ伝播に時間がかかるのです。それで最近は光をそのままスイッチングできる装置の研究が盛んになっています。同じスイッチでも原理的には色々種類がありますが、私の研究は「マイクロマシン」という微小空間で動く機械の仕組みを用いた「中空導波路」スイッチについてで、空気の中を光が伝播します。その長所は、スイッチが小型化でき、大容量の通信が可能になることです。従来の技術では、複数の信号をスイッチングしようとするとスペースの問題と速度の問題が出てきます。100×100chでは巨大なサイズになってしまいますし、現在の8×8chのスイッチでもかなり大きなサイズです。家庭用の光ファイバーが普及していけば、各家庭にもスイッチが必要になります。インターネットは大小のネットワークの集合体ですので、ネットワーク同士のつなぎ目にはどうしてもスイッチングが必要になるのです。従ってスイッチ自体が進歩すればもっとスピードが速くなるわけで、そのために新しい技術が必要なのです。

――研究が近いうちに実用化されるといいですね。
  そうですね。家庭用の光ファイバーの装置がこれに変わると、料金も安くなるし性能も良くなると思います。現在の装置はまだ時間的な遅延が大きいですが、デバイスが光をそのままで処理することができるようになれば、速度が本当に速くなるのです。

――日本に留学しようと思った理由は。
  光通信分野や電子分野は、韓国より日本が進んでいて良いのではないかと思ったのです。韓国はソフトウエアやプログラミングの分野で日本より進んでいると思いますが、ハードウエアや光通信の分野では日本がより進んでいます。
  また光通信分野の研究は装置が高価でそう簡単には買えないため、有名な大学でもない限り研究できません。たいていどこでも大学に可能な範囲内での研究をしているのです。しかし東工大の場合は大学の中でも最新の研究施設を持っており、企業と同レベルの研究が可能です。すぐに経済的利益の出ない基礎研究に国がお金を出すことは普通あまりありませんが、日本の場合は昔から数学や物理などの基礎研究に強く、研究所にしても100年の歴史を持つ研究所もあります。韓国の場合はどちらかといえばすぐに利益の出る実用的な研究が盛んなのですが、それらに学問的な深さはあまりないのではないかと感じます。