<向学新聞2010年12月号記事より>
就職活動、4割が「苦戦中」
国際留学生協会アンケート調査
入社後への不安も 専門性や母国との関係生かしたい
特定非営利活動法人国際留学生協会(東京都千代田区、略称IFSA)は、今年9月21日に開催した「IFSA外国人留学生就職フォーラム」会場で、参加留学生へのアンケート調査を行った(日経ビジネス編集部との共同実施)。198名のうち就職活動が順調だとの回答は1割に満たず、「苦戦中」との回答が4割を超えた。語学力や専門性を活かして働きたいとしながらも、入社後のコミュニケーションや出世の難しさを不安に思い、留学生採用枠の拡大を切に望む姿が浮き彫りとなっている。
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調査は無記名によるアンケートで、回答者の大半は2011年3月に卒業を控えた留学生。卒業半年前の時点でまだ内定を得ていない、あるいは内定を得てもさらに希望に合う企業を探して就職活動を続けているケースが想定される。学校別では国立大学が25%、私立大学67%、専門学校7%となっている。
「これまでに何社くらいエントリーしたか」との問いには、「1~5社」が33%と最も多かった。就職活動のスタートが遅かったためまだ多くの企業にアプローチできていない、あるいは募集を締め切っている企業が多く応募の機会が限られていた可能性が考えられる。日本企業への就職活動の状況は、「苦戦しており、希望する企業への就職は難しそう」が43%、、「希望企業だけでなくもっと多くの企業に応募したい」が38%と多かった。なかなか希望通りに内定を得られない厳しい現状がうかがえる。
また、日本企業への就職を希望する理由は、「留学経験で身に付けた語学力や専門性を活かして働きたい」が32%と最多。会社を選ぶ基準は、「母国と関係ある仕事に従事できるか」「外国籍の社員が活躍できる社風か」「海外に事業展開をしているか」といった回答が多かった。留学生としてはやはり外国人ならではの強みを活かしたいと考えており、海外事業の要となるポスト等を志望しているものと思われる。
いっぽう、日本企業に就職することについての不安は、「昇格や出世の機会の少なさ」「日本人の上司や同僚とのコミュニケーション」「母国と関わりのある業務に就く機会があるのか不明」という声が多かった。入社後に希望する業務ができるのか、社内の人事システムがどうなっているのか分からない不安を抱えつつ就職活動を行っている現状が垣間見える。日本企業は留学生採用にあたっては予めそれらの点を説明するよう努める必要がありそうだ。
また、留学生が企業に改善してもらいたいことは、「留学生採用枠を増やしてほしい」、既卒者や転職希望者からは「卒業した後も応募のチャンスを与えてほしい」といった声が多かった。通年採用の形態も徐々に増えてきたとはいえ、日本企業はまだ新卒採用中心のため、いったん時期を逃すと就職しにくいと感じているようだ。また、「筆記試験が難しすぎる」「選考期間が長く待つ期間が苦しい」「年齢制限がある」など、日本の採用活動自体への適応に苦しむ声も出ている。入り口の時点で異文化の高いハードルに直面している事がうかがわれる。
ただ、内閣府が今年7月に日本国民に行った世論調査では、外国人労働者が日本で働く際に日本の習慣に対する理解は重要だと思うか聞いたところ、「重要である」とする者の割合が88・8%にのぼっている。留学生はまず日本企業の採用慣行から適応できるように、早くから情報収集して準備することが求められているといえそうだ。
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