<向学新聞2012年4月号記事より>
災害に備え情報網構築を
外国人受入れに関する国際研修会 外務省、明大、国際移住機関主催
「外国人の受入れと社会統合のための国際ワークショップ」が3月1日、外務省、明治大学、国際移住機関の主催により明治大学で開催された。昨年3月11日に発生した東日本大震災から一年を迎え、「東日本大震災時の在留外国人への支援」と「東日本大震災後の外国人受入れの在り方」の二つのテーマで討議された。
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パネルディスカッションに際し、宮城県南三陸町で被災したフィリピン出身の佐々木アメリアさんが当時の状況を説明した。宮城県南三陸町は津波により甚大な被害を受け、590人以上が死亡、行方不明者290人以上(平成24年2月末)で、震災当時は断水、停電の中約1万人の町民が避難所生活を強いられた。高台に避難していた佐々木さんは50メートル手前で津波が止まり一命を取り留めたが、助けを求める近所の人を救うことができず高台から見つめることしか出来なかった。震災後は通訳など日本人と外国人のかけ橋になり積極的に支援活動を行った。津波で仕事を失ったフィリピン出身の仲間も、ホームヘルパーの資格取得を目指しており、生活の基盤を取り戻す目途がつきつつある。
日本で家族を持ち生活している外国人は、立派な地域の一員であり、支援される被災者という立場だけでなく、「支援者」としての外国人という姿を震災を通して再確認した。パネルディスカッションで宮城県国際交流協会の大村昌枝氏は、結婚移住者などの在住外国人が「『地域のために何が出来るのか』と陣頭指揮を取って動いてくれた」と震災時を振り返った。
また、被災現場と省庁や大使館などとの連絡体制が不十分だった問題が浮かび上がった。外務省は震災後、警察庁との連携や150カ国以上の大使館職員と毎日ミーティングを行い、外国人の安否確認に奔走していた。しかし、被災地域には多数の外国人がおり、「どこに誰がいて助けを求めているのか把握するのは非常に難しい」と外務省領事局外国人課首席事務官の高橋政司氏は述べた。
一方で、多様な国籍の外国人が通う日本語教室が、外国人ネットワークのハブとなって安否確認ができた事例もあり、地域レベルから省庁に至るまでの情報網構築が不可欠だと確認し合った。外務省は教訓を踏まえ、災害時情報共有用のfacebookアカウントを立ち上げるなど対策を取り始めた。「平時からのネットワーク構築が重要だ」と高橋氏は訴えた。
震災後の外国人受入れについては、震災前から在日外国人は減少しており、震災と原発問題が外国人減少の根本的な問題ではないという意見が多く見られた。明治大学国際センター長の横田雅弘氏は留学生、外国人労働者、移民などに、一貫した理念に基づく政策が不可欠だという考えから「国際人材育成庁」創設を提起した。留学前から就職、移民までのプロセス全体を扱うには、縦割り行政では対応できないためだ。また、明治大学は文部科学省の国際化整備拠点事業(G30)に選ばれているが、横田氏は事業の一環である英語で学位を取得できるコースが日本語学習に繋がると強調した。「英語コースは日本語教育を刺激する。英語コースの学生も日本語を学びたいという要求が出てくるはず」と述べた。
日本の労働人口の減少など、外国人の受入れについて真正面から向き合わなければいけない現状がある。地域の一員として、日本で生活している外国人の姿が震災を通して明確に浮かび上がり、今後の関わり方に示唆を与えた。
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