<向学新聞2014年3月号記事より>
世界へのマーケティング戦略を
優秀な外国人留学生の獲得へ 文科省ワーキング・グループ
文部科学省の中央教育審議会「大学のグローバル化に関するワーキング・グループ」(主査/二宮皓比治山大学・比治山短期大学部学長)が2月3日に開催された。大学のグローバル化を推進する文科省事業等について大学などから選ばれた委員が討議を行い、外国人留学生の受入れ拡大に向けた世界へのマーケティング戦略が大きな焦点となった。
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日本政府は2020年までに外国人留学生30万人を目指しているが、現在約13万8000人の留学生が日本の大学等で学んでいる。留学生の受入れ拡大に向け、文科省は海外現地学生の留学に関するニーズ把握や大使館との連携を目的とした留学コーディネーターの配置を2014年度事業に盛り込んだ。
奨学金の充実を図るため、国費留学生数をこれまでより250人以上増やす他、世界トップレベルの教育研究を行う大学などを後押しするスーパーグローバル大学創設支援事業も予定している。世界ランキングトップ100を目指す大学や日本全体のグローバル化を推進する大学30校が選ばれ、77億円が投じられる。
世界最大の約82万人の留学生が学ぶ米国のように、日本の大学が世界トップレベルとして広く認知されることは、留学生受入れ拡大には欠かせない。文科省の担当者は、「優秀な外国人留学生の確保が課題。ASEANを中心にロシアやインドなどを見据えた戦略が必要だ」と述べている。
これらの事業に加え、東京大学理事の江川雅子委員が「留学生受入れには、国としてのマーケティング戦略が必要だ」と説き、東京大学大学院教授の堀井秀之委員も「先日インドに行く機会があったが、現地学生は日本の大学について知らず驚きだった。日本を留学先として考えていない」と海外の現状を指摘した。堀井委員はさらに、「世界の大学はサマースクールを利用して留学生を獲得している。学生交流が宣伝に繋がる機会が非常に重要だ」と解決策を提案した。また、一般社団法人日本貿易会常務理事の市村泰男委員は産業界と比較し、「企業のトップは、毎年IR活動のために世界を飛び回るのが常識。受身ではなく能動的にPRしなければいけない」と強調した。
就職など留学生の出口に関する課題も議論され、堀井委員は、「米国にはアメリカンドリームがあるが、日本にはジャパニーズドリームがない。せっかく獲得した留学生をどのように活かすかが大事だ」と主張した。法務省の統計では、2012年に日本企業に就職した留学生は約1万1000人で、在籍留学生数から考えるとまだまだ就職者数を伸ばせる余地がある。
日本が魅力的な留学先として認知されるには、入口から出口までの一貫したビジョンと支援がなければならない。その中でも、海外へのマーケティング戦略が大きな課題であることが浮き彫りとなり、議論の活用が期待される。
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