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向学新聞2014年5月号


留学生の住環境に関する検討会

                  定性的観点が必要

 文部科学省は4月17日、有識者を検討会委員として迎え「留学生30万人計画実現に向けた留学生の住環境支援の在り方検討会」を開催した。 
 
 冒頭、文科省の渡辺学生・留学生課長が、「留学生30万人計画の実現には宿舎の充実が重要だが、実際に学校や公益法人等が設置する留学生宿舎を利用している学生は23%しかいない。全ての留学生が入学後すぐに宿舎を利用できない」と課題を提示した。
 
 現在、日本学生支援機構(JASSO)が札幌、東京、金沢、兵庫、福岡、大分の6箇所に国際宿舎を所有しているが、文科省が2013年度の平均入居率を公表し、特に札幌と大分がそれぞれ、入居率約40%・約63%と低い数値となっていることが明らかになった。入居率が低い理由について渡辺学生・留学生課長は、「札幌の宿舎の場合、北海道大学から数駅分移動距離があり、研究で忙しい留学生は利用しづらい」と説明した。
 
 JASSOが所有するこれらの国際宿舎は、大幅な赤字を計上しているため、2010年に売却方針が閣議決定された。大阪や広島などの宿舎は既に大学が購入しているが、残りの6箇所は入札でも応募がない。赤字に加え、国際交流の場として使用しなければならないという制限があり、民間は購入しづらい状況だ。
 
 国際交流を目的としながらも、経済的効率性を追求する政府の売却方針に対し、NPO法人国際社会貢献センター事務局長の関委員は、「優秀な留学生を受入れるための施設であるならば、定量的な面だけではなく、定性的観点が必要だ」と述べた。平安女学院大学副学長の谷口委員も、「留学生の視点が欠けている」と指摘した。
 
 2013年1月、売却見込みがない宿舎については検討の上、最終方針を今年の夏に決定する閣議決定がなされた。検討会は議論を重ねた上で、8月末までに最終報告書をまとめ公表する予定だ。



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