向学新聞2016年6月号
韓国・豪州の先進事例セミナー
RECSIEが開催 韓国・厳しい就職状況が課題
東洋大学と一般社団法人「持続可能な国際教育推進のための研究コンソーシアム」(RECSIE)が5月20日、東洋大学でセミナー「大学の国際化と留学生リクルート・アドミッション・エンロールメントマネジメントの将来像を考える」を開催した。同セミナーは大学のグローバル化を推進するため、韓国と豪州の先進事例を学ぶ海外研修を実施。研修に参加した大学職員が、研修内容を報告した。
一橋大学国際教育センター教授の太田浩氏は冒頭、「韓国は仁川に国際教育ハブを作ろうとしている。日本が韓国から学ぶことは多い」と意義を訴えた。立命館アジア太平洋大学(APU)アドミッションズ・オフィスの末永拓海氏は、仁川で進められている「仁川グローバルキャンパス」(IGC)について説明した。
韓国政府は10億USドルを投じて、海外の一流大学10校の誘致を計画。現在NY州立大学、ユタ大学、ゲント大学(ベルギー)など4大学がキャンパスを設置している。仁川に海外本校から教員が派遣され、メインキャンパスと同じ水準の授業、同じ学位を取得できる。学生は4年間のうち1年はメインキャンパスで学習する必要がある。ユタ大学にとっては初の海外キャンパスとなり、2014年に開設。2015年11月時点で130人の学生が学び、9割は韓国人学生が占めている。
末永氏は韓国の先進的な取り組みを評価する一方で、「IGCは10大学の誘致と1万人の学生を目標としているが、現在は4大学と875人の学生しか集まっていない」と目標と現実とのギャップを指摘した。また、財政事情にも触れ「各キャンパスは仁川から5年間補助金が支給されるが、海外のメインキャンパスからの援助はない。この数年間が正念場になるだろう」と話した。
会場からは、「韓国のグローバル化は見習うところはあると思うが、就職の成果はどうなっているのか。韓国の就職状況は非常に厳しいと聞いている」と質問が寄せられた。末永氏は「韓国側も就職が課題だと認識している。就職の厳しさからAPUにも韓国の大学生からの受験生が増加している」と答え、今後の動向を注視する必要性を説明した。
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