<向学新聞2017年9月号記事より>
大学間連携に課題
ネットワークが分散化
学生のモビリティのデータ把握を
アジア太平洋における学生流動化と学生支援の将来像について考えるシンポジウムが、東洋大学白山キャンパスにて8月18日・19日に開催された。主催はUMAP(アジア太平洋大学交流機構)およびJAISE(留学生教育学会)。初日は海外と日本の大学関係者など約200名が参加し、短期留学推進や大学間ネットワークの活用などを主要テーマに活発な議論を繰り広げた。
パネルディスカッションで発言するパネラー
(8月18日「アジア太平洋における学生流動化と学生支援の新潮流と将来像」国際フォーラム)
18日に行われた国際フォーラムでは、まず米国IIEのクリスチーヌ・ファルージャ氏が「学生流動化のビッグデータの分析」と題して基調講演。IIEが学生のモビリティの全体像を把握しようと2001年から実施している、「Project Atlas Mesuring Global Mobility」の概要を紹介した。ファルージャ氏は、「(データにより)学生の志向を特定でき、モビリティによる影響を把握し、彼らがスキルを身につけて帰国したかどうかが分かる。国家的な開発を行うことができ、より大きなグローバルトレンドが何か、それに遅れをとっていないか知る事ができる」として、包括的なデータを把握することの重要性を訴えた。
また、豪州IEAAのクリストファー・ジグルス氏は、「アジア太平洋地域のモビリティにおける質的向上と量的拡大」と題する基調講演において、「机上だけでなく外に出て学びたい人が増えている」と豪州のトレンドを紹介。「対人関係やモチベーションなどは教室外のところで学んでいかなければならない。学生のモビリティはそうしたスキルを高めていく上で重要だ」と指摘した。
続くパネルディスカッションでは、会場からの意見も交えながら、大学間ネットワークや単位互換の課題点などについて討論を行った。
カナダCBIEディレクターのジャクリーン・ホルト氏は、「学外で取った単位を認めるには教員にどう関わってもらうかが非常に重要」だとして、海外大との教員交換を一つの方策として提案した。
東京大学の北村友人氏は、「どうやって単位を認めて学生の成績を残すのか。一つのシステムから別のシステムに単位互換をすることは難しい」として、分散化しているプログラムを統合し一つの単位互換制度を構築することが必要だとした。また北村氏は大学間連携の現状について、「余りに多くのコンソーシアムやネットワークがあり、上手く機能していないものもある。しばしば個人的関係で維持されており、人の異動を機に不参加になることもある。なぜ参加しているのかクリアにし、大学が学生に何を提供できるか明確になっていることがネットワークに留まる条件」であると述べた。
これを受け一橋大学の太田浩氏は、「参加大学がUMAPのために何を提供できるのかについて、プロフィール等のデータベースを作るべき」と提案した。
また、早稲田大学の黒田一雄氏は、「現状の大学間ネットワークはカオスの状態。ASEAN+3、APACなどで様々な枠組が構築されている。UMAPがリーダーシップをとってこういったネットワークをまとめてほしい」と訴えた。
最後にモデレーターである広島大学の堀田泰司氏が、「UMAPは、優劣ではなく誰とパートナーになれるかというマッチメイキング。ランキングではない何らかの標準化した枠組みと指標を作り、学生に備わる資格について透明性を確保したうえで提供するべき」と結んだ。
2日目の19日にも150名が参加し、ワークショップや個別のケーススタディーの発表等を行った。
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