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向学新聞2020年4月1日号記事より>

“公認日本語教師”の検討状況
日本語教育推進法と社会制度設計の在り方とは
能力試験、教育実習、学士以上が要件
特定技能向け日本語試験の志願者増


 一般社団法人全国日本語教師養成協議会(全養協)は2月1日に公開講座「日本語教育推進法と“公認日本語教師”」を開催した。当日は文化庁の担当者が、日本語教師の資格“公認日本語教師(仮称)”の検討状況を説明。また、国際交流基金から、特定技能取得希望者向けの新たな日本語試験の実施状況について報告がなされた。


 
420時間修了者等は要件満たす
 当日ははじめに文化庁国語課日本語教育専門官の津田保行氏が、現在文化庁で検討が行われている日本語教師の資格“公認日本語教師(仮称)”の検討状況を報告。教師資格の登録要件は、日本語教育能力の試験の合格、教育実習、学士以上の学位の三つとなる。また現行の法務省の告示基準を満たす者については経過措置を設ける方向性だ。具体的には、「日本語教育機関の告示基準を満たす大学日本語教師養成課程の修了者や、文化庁への届出が受理された420時間以上の日本語教師養成研修の修了者、日本語教育能力検定試験の合格者は、公認日本語教師(仮称)の要件を満たすものとして、一定の移行期間を設け、公認日本語教師(仮称)として登録を行えることが適当だと考えられている」と説明した。

 また、文化庁では日本語教室の空白地域の解消推進事業を行っており、日本語教室に通えない外国人が独学で生活に必要な日本語を習得できるコンテンツを令和元年度から6言語で開発。買い物、公共交通機関の利用など生活場面が中心の内容で、令和2年4月中旬には動画中心のICT教材をWebで公開予定としている。また同年度中に追加で4言語作成予定だという。

 続いて文化庁日本語教育小委員会の元委員(主査)である伊東祐郎氏(国際教養大学)が、日本語教育推進法と今後の日本語教育について講演。「公認日本語教師は教師の質を担保する点では重要だろうし、制度ができることによってその職を目指す人が出てくる」、「地位の認知が社会的に広められることによって職業としての安定化が進んでいく」と制度実現への期待を述べた。

 そして「行政と日本語教育関係者が結びつき、社会の制度設計を一緒に行っていくことが求められている」として、環境整備に向けて日本語教育関係者の主体的な参与を促した。特に連携の重要性を強調し、「昔のアジア人材資金構想のようなコンソーシアムや、地域ごとに中心となるハブを作るような形で体制を整備できれば」として、連携教育推進のスキームづくりが将来の制度設計に組み込まれることを期待した。

 最後に国際交流基金の下山雅也氏が、特定技能志望者のための日本語基礎テスト「JFT―Basic」の実施状況を報告。「CBT(コンピュータテスト)なので回数もフレキシブルに実施でき、結果が終わった瞬間出るので受けやすくなる」とメリットを説明した。昨年4月から9月まではフィリピンのマニラでのみ比較的小さい規模で実施したが、10月以降、インドネシア、モンゴルなど実施国を拡大した。「10月にネパールで試験を実施したところ、技能試験の受験予定者数を基に希望者1000人位と予測していたら1万5000人位申し込みがあることがわかり、抽選方式を取らざるを得なかった」という。さらに1月も3月もネパールでは同様に応募倍率が十数倍に上り、人気が非常に高まっている状況だと述べた。今後も同試験は規模を拡大予定で、3月にはミャンマーでも実施。ベトナム、中国、タイは現地政府との調整ができ次第速やかに実施していくという。

 国際交流基金では同時に教材開発も進めている。昨年9月に、外国人が日本で生活・労働する上で必要となる日本語能力をリスト化した「JF生活日本語Can―do」を公開。これをベースに教材を開発中だ。JFT―BasicはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA2レベルを想定しているが、そのレベルに至るまでのA1レベルの入門編と、A2レベルの初級編の教材を開発しており、3月末にまずA2レベル初級1と2の公開が行われる予定だ。音声なども聞けるPDF教材がネットにアップされる形となり、日英両言語併記版が3月に公開予定だが、今後多言語化も行う。入門編も今年後半には公開を見込んでいるという。



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