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向学新聞2021年10月号目次>日本で働く元留学生たち

元留学生

向学新聞2021年10月1日号記事より>

日本で働く元留学生たち
王 浩悦さん
製造メーカー
就職活動は自分を掘り下げる良い機会

王 浩悦さん

京都教育大学院教育学研究科 修士課程修了、日本語学校・専門学校の学校勤務を経て現職

――王さんは社会人5年目ですが、留学生の後輩たちに伝えたいことは何ですか。
 やはり、就職活動の事ですね。振り返ってみて、日本の就職活動は大変ですが、自分を掘り下げて将来のビジョンを描く良い機会だったと感じます。
 留学生は、ビザの問題があるので、なんとか卒業までに仕事を探そうと焦ったり、とりあえずは入れればどこでも良い、と妥協して考える場合が多いのです。しかし、それで入社できたとしても、その後で問題に直面する可能性が高いです。卒業というゴールがある学生と違って、社会人にはゴールがありません。ですから、就職活動で自分に対する問いかけをして、自分の将来について学生なりに考えておかないと、入社してから働く意欲がなくなったり、ちょっとした問題でくじけてしまったり、漠然と会社に不満を持ってすぐに辞めてしまい、職を転々とすることになってしまいます。


 自分は社会に出て何ができるか、何をしたいか、得意なことは何か。ただ「就職する」ことだけを目的にせず、就職活動を通して、社会に出る前に自分を探すチャンスにしてほしいです。

 また、仕事を探しながら自分のベースにあった就職活動ができれば、就職活動は負担ではなく、残りの少ない学生時代の最後の学びであり、学生時代のまとめにもなります。当然、就職活動と学業や論文へのバランス調整は大変で、周りの人がどんどん内定をもらって自分も焦ったりするところもあると思います。皆んなそれぞれの課題と学びが必要だと穏やかな気持ちで流れば良いです。私も、人のまねばかりして就職活動をしているうちは実りがありませんでしたが、枠の中に閉じこもらないで、自分で考えて、他の大学の就職イベントにも積極的に参加するようになってからは、たくさんの仲間と出会い、たくさん刺激をもらいました。そして、就職活動という舞台では自分はやっと主役になり、他人の目を気にしない、失敗に恐れずに、ただの自由に、好きなように踊って、学びと実がいっぱいできた楽しい就職活動になっていきました。

 最後、ぜひ皆さんに大事にしてほしいことは「繋がりを大切にすること」。社会に出てからも、お世話になった先生やアルバイトで出会った方々、一緒に大学生活を歩んできた仲間たちとの繋がりは、私たちにとって大事な財産です。連絡を取って情報交換をしたり、挨拶をするだけでも良いです。
ぜひ、社会人になっても忘れないくださいね。

――学生時代を振り返って、大学の就職支援についてはどのように感じましたか。
 私のいた大学では、就職活動が始まる少し前から大学の就職支援が始まって、就活セミナーや対策講座がありましたが、なぜそれが必要なのか、全体がどういう流れなのかが良く分かりませんでした。ですから、入学した時から、情報提供をして、就職活動への意識づけをしてもらえると良いと思います。例えば、大学一年生の時点で就職活動中の先輩との交流会や企業見学、卒業生へのインタビューイベントなどは大学の最初段階でやってほしいです。

 また、在学中に、留学生自身の力が発揮される機会をできるだけ多く提供してほしいです。なぜかというと、中小企業では、入社後の新人研修体制がそれほど充実していない場合は、OJTで学んで経験を積むことになります。その時に、経験から気づきを得て積極的に学びとることや、人と協力して物事を進めることのスキルは、学生時代に経験して磨かれていないと、なかなか難しいと感じるからです。例えば、自己マネジメントができなかったり、人間関係のトラブルなど多くでたりします。日本人の若者も似たような問題が見られています。学生にとっては就職は一つの節目ですが、ゴールではなく、その後社会人として充実感を持って働くために、必要な支援をしてほしいと思います。

――王さんは現在、社内の外国籍社員のサポートを任されています。日本企業で働いてみて感じる大変さややりがいはどのようなものがありますか。
 私の会社には、私も含めて合計5名の外国籍社員がいます。外国籍社員も働きやすい環境づくりのために、日本語学習や外国籍社員だけの交流会や定期ミーティング、情報共有の取り組みをしています。

 外国人社員だけの集まりでは、「日本人社員から見下されているように感じる」「信頼されていないと感じる対応を受けた」という声が聞かれる時があります。私もそう感じた経験があり、その時はとても悲しくなりました。しかし会社も変わっていこうというスタンスが見られ、後輩へのサポートも依頼されています。定期ミーティングと交流会では「仕事をしっかりこなすことと、心を強くして気にしないことも、大事なスキルとして身につけよう」と後輩たちに話しました。また、仕事をしながら次のスッテプ向けての資格準備や新しいことをチャレンジしたり、自分を常に更新することといつになっても探し続けることを念頭に入れておくことを伝えっています。

 さらに、働く中でコミュニケーション不足で生じる誤解も多いので、仕事以外で社員同士が深く交流できるイベントがもっとあったらよいと思います。例えば、外国人社員だけでなく、多文化共生に関心の高い日本人社員も交流に入ってもらうのも良いと考えています。

 そして、企業の採用担当者にお伝えしたいのは「断る勇気を持ってください」。この留学生を採用して、本当に会社で育てられるのか、適切な活躍の場所があるのか。その人がとても良い人材だから採用するのではなく、会社の状況と彼らのキャリアを考えた上で、責任を持ってよく見極めて採用してほしいです。

――多文化共生社会について
 一緒に働いていても、まだまだ交流や理解が浅くとてももったいないと感じます。日本人はシャイで、外国人に積極的に話しかけない人も多いです。でも、様々なルーツ・文化背景を持った人たちが、同じ会社で肩を並べて働いているなんて、すごく面白いと思います。前向きに交流して、お互いに学びあって高め合っていけたら、とても希望的な未来がひらかれると感じます。

 最後:留学生をサポートしている団体、企業、大学関係者様へ
10年前と違って、留学生を支援している企業や団体、地域の方々がたくさん増えており、本当により良い方向へ変化していると実感しています。心より感謝を申し上げます。今後、共生社会の生き方・歩み方を一緒に試行錯誤しながら一緒に楽しんで歩んでいきましょう。

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