Top>向学新聞>日本で働く留学生OBたち>グェン バンニャットユイさん
向学新聞2021年10月号目次>日本で働く元留学生たち グェン バンニャットユイさん
<向学新聞2021年10月1日号記事より>
日本で働く元留学生たち
グェン バンニャットユイさん
倉敷紡績株式会社(クラボウ)
初心を忘れず 目標を明確に
東京農工大学工学部有機材料化学科卒業後、現職
――なぜ日本に留学しようと思ったのですか。
一つは、6歳上の兄が先に日本に留学に来ていて、日本についての話を聞き興味が湧きました。電車のことや、新幹線が早いこと や電線が地下を通っていることなど。日本の都市の景色を自分の目で見てみたいと思いました。
もう一つは、私は将来、エンジニアになりたいという希望があったので、高い技術力のある日本に留学しようと決めました。最初に日本に来た時は、成田空港を降りて、次々に来る電車や、車の多い日本の都市の風景を見て、びっくりしたのを覚えています。
まず、日本語学校で2年間日本語を学びました。新聞奨学生として、新聞配達をしながら勉強しました。雨の日も風の日も毎日なので、とても大変でしたが、店長の励ましの言葉や報酬をもらえることが励みでした。日本語学習は、中国人韓国人に比べて少し遅いところもあるかもしれませんが、ベトナムも昔は漢字があったので、負けないはずだと信じて頑張りました。
――大学生活ではどのようなことを学びましたか。
大学では、有機化学を学びました。勉強については、「一人でやるべきではない」と今では思います。二人くらいで、一緒に宿題をしたり話し合うと世界がとても広がります。私はクラスに留学生が一人だけで、日本人の学生はグループを作っていたりして、最初は入りにくい雰囲気でした。きっかけを自分から作る必要があると感じ、スポーツが好きだったので、バドミントンやフットサルのサークルに入って、そこから同じクラスの友達ができたので、スポーツは親しくなるのにとても良いと感じました。
――就職活動はどうでしたか。
不合格が多くとても大変でした。先輩の話を聞いたり、大学で面接の練習をしてもらいました。大学院に進学する道もありましたが、私は研究よりも仕事がしたいと思い就職を選びました。現場で人と関わりながら実践して、将来の目標であるエンジニアとしての実務経験を積みたいと考えたのです。
後輩の皆さんへのアドバイスとしては、事前準備やSPI試験の対策、あとは興味のある分野の資格を取ることもおすすめします。面接はたくさん練習すると良いです。
また会社の探し方は、外国人向けの就職サイトや就職イベントを利用したり、ベトナムに拠点があるかもチェックしました。たくさんある企業から探すのは大変ですが、自分のやりたいことは何か、それができる会社はどこか、をポイントに置いて探すことが大事だと思います。実際に行動して、友達と就職イベントに行っていろいろな会社の話を聞くうちに、働くイメージがだんだんとはっきりしてきます。
<就職活動の対策> ① 事前準備 ② SPIの問題集をよく解く ③ 資格取得 ④ 面接練習 |
――グェンさんは、今年で入社3年目ですが、日本で働くことの大変さややりがいはどんなところにありますか。
専門用語が多いことが、最初はとても大変でした。もう一つは、人間関係です。日本人社員が冗談を言う時、ツボが分からず、何が楽しいのか分からないことがありますした。また、大学と違って、色んな年齢の社員がいるので、年配の社員の方と話しづらく感じることがありますした。私は意見をはっきり言いたいタイプなのですが、これは言っちゃダメなんだなと後から気づくこともありますした。
良かったと感じることは、実務経験が全くない白紙の状態で入社しましたが、ゼロから育ててもらって、困ったことがあっても相談しやすい雰囲気や体制が現在の会社にはあることです。相談できる人が何人かいるので、安心して仕事を頑張れます。
今は、繊維事業部で染色加工について勉強しているところです。私の大事にしているキーワードは、「全体をみられるようになる」ということです。将来、ベトナムの事業を任される時に向けての準備期間です。
仕事のやりがいは、会社から大事な目標を与えられて、成長のためサポートしてもらいながら、働けることです。職場の社員とも仲良くなれて楽しく仕事をしています。
――人事担当者は「グェンさんのように、目標に向かって頑張る姿勢は、周りの社員にも良い影響を与えてくれている。これは外国人とか日本人とかは関係ありません。」と話していました。
――これから日本で働きたいと考えている留学生たちに、どんなことを伝えたいですか。
外国にいるので心細くなることもあります。家族が遠くにいるので、今もそう感じることがあります。でも大事なことは「初心忘るべからず」だと思います。何のために来たのか、初心を確かめたり、何をしたいのかという将来の目標をはっきり持つことが、困難を超えていくには必要なことだと感じます。毎日そこを確認することで、モチベーションを維持できるのではないでしょうか。
例えば就労ビザの5年間で、500万の貯金をやりとげる、という目標でも良いと思います。それで頑張って400万しか行かなくても、悔しさを次の目標に向かう力にしたり、日本と相性が悪いと感じたなら、帰国して次の目標を作るのも良いです。
就職活動で、不合格が続くと落ち込みますが、前向きにあきらめないことが大事です。たとえ1社落ちても、他にも会社はたくさんあるし、次の機会にはもっと改善して臨もうと考えて欲しいです。日本語力があれば、ひとまずは通訳の仕事をしたり、または日本語学校にもう1年行って、就職浪人のようにしてまた次の就職の機会を狙ったり。難しいと感じる状況でも、次に進む手段ややれることはいくつもあるはずなので、諦めずに挑戦することが大事だと思います。
a:2066 t:1 y:1