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省エネビジネスの推進 


オールジャパンの省エネプロジェクト  ビジネス通じ地球環境問題を解決


 今月は、省エネビジネスの普及促進をはかる「世界省エネルギー等ビジネス推進協議会」の、菅沼希一氏と大関彰一郎氏にお話を伺った。

官民一体で省エネ促進


――「世界省エネルギー等ビジネス推進協議会」とは何ですか。
大関 省エネ製品・技術が広くビジネスとして世界市場で受け入れられる仕組みづくりを目指し、2008年10月30日に政府と経済団体とが共同で発足させた団体です。海外に省エネ機器の普及を図るには技術移転や政策援助だけでは限界があり、やはりビジネスベースで設備を売っていくことが必要との観点から、プラントメーカーや機器メーカー、商社やファイナンスまでが参加し、経産省などのバックアップのもとに活動しています。
  会員企業・団体のうちから、メーカー等を中心に35会員の省エネ・新エネ技術162件の情報を集大成した「国際展開技術集」を英語・日本語・中国語およびスペイン語で作り、世界のビジネス界や各国首脳、政府関係者等に発信しています。

――なぜ官民の協力が必要なのですか。
大関 やはり途上国にとっては省エネルギー機器導入のコストが高いので、助成の仕組みを作らなければ広まりません。これは一企業では解決が困難な問題であり、日本政府および相手国の政府と一緒に考えていかなければなりません。
  日本は終戦後の石炭不足とオイルショックを契機に、国と民間が一緒になって省エネ活動を進めてきました。企業が集まって燃焼効率を上げる方法を検討し、国もガイドラインを作って燃料をうまく使うよう促しました。ただ、企業にとっては燃焼管理の計器を付けるにもお金がかかりますので導入は進まず、国がその費用の一部を補助したり、税金の一部を免除するなどの措置を講じたという経緯があります。
菅沼 そのような官民の努力によって日本は先進的な省エネ・新エネ技術を持つに至り、過去30年間で37%もエネルギー効率を改善しています。しかし現在多くの途上国では経済発展に伴ってエネルギー消費が増大し続けており、特に資源国はエネルギー価格が安いので、省エネルギーのインセンティブが働いていません。エネルギー消費の増大に伴うCO2排出の増大は、地球規模の問題ですから、日本の省エネ・新エネ技術をうまく使ってCO2の排出増加を抑えることができれば、地球環境問題への日本の貢献としてアピールできると思います。
  また、途上国の中には国産品しか使ってはいけない決まりを設けたり、海外製品に高関税をかけたりしている国があったり、いわゆる非関税障壁といわれるものが存在する国があります。それらの障壁を日本の一企業だけで打ち破るのは困難であるため、官民一体となった取組が必要なのです。また、製造業や商社などが業界を超えて連携し、金融商品などとセットで技術を提供することで、世界に受け入れられる新しいビジネスの仕組みを作っていこうとしています。世界で戦うライバル企業どうしも会員になっていますが、皆さん、個々の企業の利益追求よりも、日本のビジネス界としての世界貢献や、日本の企業が世界の他の企業と対等に戦える条件整備には何が必要か、ということを議論してくださっています。そのような条件整備ができた後は、各社間の競争ということになります。
  現在、協議会ではヒートポンプやインバーター、省エネソリューション及び太陽光発電などのワーキンググループを作って意欲のある会員が月一回程度集まり、途上国で日本の省エネ技術の効果を体験してもらうためのプロジェクトを立ち上げようとしています。2009年度は、地域や国ごとに絞り込んだビジネスモデルの構築を目指しており、「オールジャパンのプロジェクトの省エネ効果」をアピールすることで、日本の省エネ・新エネ等の製品や技術がビジネスベースで普及して行くことを期待するとともに、その導入を後押しするような、たとえば初期投資の補助制度の導入を相手国政府に働き掛ける、といったことも考えて行きたいと思います。
大関 従来のように、先進国が援助してくれるから途上国が導入するという形では省エネは進みません。例えば、若干高い機械・設備でもそれを買えば国全体の電力消費量が減り、年中停電が起こっている国でも発電所を作らなくて済むようになり、国にとって効果がある。そういうペイバックが起こるものを宣伝し、相手国には低金利融資をつけてあげる、などをしながら、ビジネスとして成り立つ物を導入しようというのです。
  今後アジアのエネルギー消費をいかに抑えていくかは重要課題であり、特に産業用途でCO2排出の多いタイ、中国、インド等には積極的に省エネ技術を移転していく必要があります。日本が国際貢献としてもビジネスとしてもアジア諸国とウインウインの関係を築き、メリットを共有しながら省エネを進めていけるようになることを期待しています。


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