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ASNAROプロジェクト 


小型衛星を世界市場に  日本の「お家芸」技術を活かす

 今月は、「ASNAROプロジェクト」に携わる財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)の三原氏と、NECの小川氏にお話を伺った。


商用で世界最高水準

――ASNAROプロジェクトとは何ですか。
 三原 ASNAROとはAdvanced Satellite with New system Architecture for Observationの略で、小型衛星を短期間・低コストで開発する手法を確立するため2008年から開始された経済産業省のプロジェクトです。504kmの高度で分解能50cm以下と、商用で世界最高水準の性能を持つ小型地球観測衛星「ASNARO」の開発を進めており、2012年度の打ち上げを目指しています。将来的には世界市場へのビジネス展開を視野に入れています。

――どのような点が新しいのですか。
 三原 これまでの衛星開発は目的に応じてオーダーメイドで設計を行っていたため、開発期間が長く多大な予算が必要でした。一方、携帯電話やパソコンのように標準化や量産化が可能であれば、衛星システムにおいても製品ごとの設計コストは低く抑えられて価格競争力が確保でき、まだシステム構築能力を持たない途上国へのプラットフォーム輸出も可能となります。ASNAROは、目的に応じて取り換え可能な「ミッション部」と、それを支える基幹部分の「バス部」でできています。このバスシステムを標準化し、衛星を各国共通で使えるようにできればと考えています。
 衛星を打ち上げて運用するためには秒速8km以上の速度で宇宙に持っていく必要があるため、装備を小型化・軽量化してより多くのものを詰め込む技術が求められます。その点ではICの小型集積化技術や、大量データを蓄積できるメモリ技術、軽量化できる材料技術など、「お家芸」とも言われる日本技術の強みが活かされています。

――具体的には何ができるのでしょうか。
 三原 ASNAROは1周90分で一日に何回も地球の周りを回るのですが、何月何日何時にどこの画像をとるという命令を蓄積し、1週間何も指令しなくても動く自動化・自律化を目標としています。また、輪郭がわかるセンサと色がわかるセンサで得た映像を組み合わせることで鮮明な画像が再現でき、農業や地質探査等に応用することが可能です。

――国は小型人工衛星開発を「宇宙産業」へと盛り上げていこうとしています。
 三原 現状では国からの予算では、ほとんどが研究目的の個別衛星で、民間の参加も受注した企業止まりです。単に国からの受注で実用衛星を製造するという構造では産業化は難しいのです。民間と国の機関とで一緒に投資して作り上げる「PPP」(パブリックプライベートパートナーシップ)や、将来の画像販売についても国が一定程度の購入を約束する制度の確立が必要です。そうすれば初期費用は回収できますので打ち上げ時の投資も可能になります。画像は国が買ってくれてさらにビジネスをして儲けて良いという産業化のモデルができれば、小型衛星は世界中に売れる可能性があります。


「サービス」を売る

――設計・製造を担当するNECの小川さんにお聞きします。従来の衛星開発と最も異なる点は?
 小川 複数のミッションで同じ衛星バスが使えるようにするためには何が必要か、複数のプロジェクト担当者が集まって議論し、標準的なルールを作ろうとした点です。

――衛星を売る上で大事なことは。
 小川 アフリカ、アジア、南アメリカなどでは農業、林業、資源探査、災害監視等の道具として衛星を使おうとしており、今後これらの国で宇宙の利用が広まる可能性があります。ですから顧客の要求に対応できる「サービス」を売ることが重要です。例えばこれから衛星を持とうとしている国がお金がない場合、まずデータを受信する権利を使えるようにし、地上の受信局設置から始めましょうという売り方もできます。それで有効性が分かったならば、次は小さな衛星を自前で持つことを勧めるといったように、様々なバリエーションを提案できるわけです。また、一つの衛星を複数の国でシェアして、例えばアジアで撮ったあと地球の裏側に入って使っていない時にはアフリカの国に使ってもらうというビジネスプランも考えられます。これならシェアする分、保有国の費用が安くなるのです。

――衛星利用の現状は。
 小川 米国などの1~2トン級の衛星の画像を買ってくるケースと、英国SSTLのように、100kg程度で低解像度の衛星画像を新興国に安価で提供するモデルに分かれており、その間のクラスの衛星がありません。そこで、米国の商用衛星並みの画像解像度を持ちつつ、欧米の小型衛星に匹敵する低価格・短納期の衛星を作り、未開拓の地を目指さなければなりません。国も原子力や新幹線とあわせて基幹産業としての衛星を売っていこうとしていますので、我々もニーズのある未開拓分野に打って出て、新興国などへの幅広い普及を図りたいと考えています。



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