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超電導ケーブル 


電気抵抗なく損失を無くす  超電導ケーブルで世界を繋ぐ

 今月は、住友電気工業株式会社材料技術研究開発本部の佐藤謙一氏にお話をお聞きした。

銅ケーブルの200倍

――超電導ケーブルとは何でしょうか。
 電気抵抗無しに電流を流すことが出来るケーブルです。現在日本の電力の総需要は約1兆キロワット時ですが、約5パーセントにあたる、500億キロワット時が送電時に熱に変化し利用できなくなっています。これが超電導ケーブルでは電気抵抗がないため、送電時の電力の損失がほとんどなくなります。また、現在は銅ケーブルを使い送電されていますが、銅ケーブル2トン分の電流を超電導ケーブル10キログラムで流すことができます。つまり、重さが同じ場合、超伝導ケーブルは銅ケーブルの200倍の電流を流すことができるのです。さらに、現在日本には架空と地中を合わせて約16万キロメートルの送電線があり、地中にある約2万1千キロメートルの送電線を超電導ケーブルに置き換えた場合、約400万トンのCO2を削減することができます。また、都内の高速道路の下には、直径3メートル程ほどのトンネルが掘られており、その中に電力を運ぶ銅ケーブルが張り巡らされています。超電導ケーブルの場合、一本のケーブルを直径15センチのパイプに収めて必要とされる電流を流すことができるため、銅ケーブルと比べて非常にコンパクトに利用でき、地下スペースを有効活用できるというメリットもあります。
 高度経済成長期にあたる1970年代~1980年代に、トンネルが掘られ、銅ケーブルが設置されました。しかし、銅ケーブルの寿命が約40年で、2020年を目安にケーブルを更新しなければならないことや、年々都市部の電力消費量が高まっているなどの問題があり、1991年から省エネでより容量のある超電導ケーブルの研究開発を始めました。いよいよ来年の秋に、横浜で日本初の超電導ケーブルの実証実験を行う予定です。

――超電導ケーブルを利用した将来像は。
 世界的な超電導ケーブルネットワークを形成する「ジェネシス計画」を1989年に三洋電機元社長の桑野幸徳氏が提唱しました。世界の砂漠の4パーセントに太陽電池を設置することで、全世界の需要をまかなう電力を確保できることが分かっています。広大な砂漠地帯と言えば、アフリカ、中近東、中国、オーストラリア、アメリカですが、一日の中でも太陽が昇っている時間帯と夜の時間帯があり、太陽電池は安定的に電気を供給できないというデメリットもあります。そこで超電導ケーブルで世界を繋ぎ、いつでも太陽電池で世界中に電力を送ることを目指すのが「ジェネシス計画」です。
 さらに現在日本の学者達が、「サハラソーラーブリーダー」という計画を提案しています。サハラ砂漠にはシリコンを含む石が大量にあり、そのシリコンを精製して太陽電池を作り、超電導ケーブルでその電力を世界中に輸出するという計画です。アフリカの人達が自ら産業を興し、雇用を生み出すことができるため、強く支持され、計画は少しずつですが動き始めています。このように、大量の電力を送電できる超電導ケーブルと再生可能エネルギー技術とのコラボレーションにより、世界的な貢献が期待されています。壮大な計画の実現にはある程度の歳月を必要としますが、その為にまず、日本での超電導ケーブルの実証実験、そして実用化をしっかり進めていきたいと思います。



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