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ジャン プレゲンズ 氏 
(ルーテル学院大学教授) 


自ら問題に取り組む教育を  日本の教育は質的転換が必要

――日本の高等教育は海外で評価されていないという意見があります。留学生受け入れ拡大には教育の質向上が欠かせませんが、どのように変わっていくべきでしょうか。
 世界基準の教育を実施することが非常に重要です。世界基準とは何かと言えば、実用的であることが一つのポイントです。教員に教わるだけではなく、学生自ら直接問題に取り組む教育です。

――米国は世界最大の留学生受け入れ国です。どういった教育が魅力的なのでしょうか。
 例えば、誰が授業の中心なのかという点で、日本と米国では違いがあります。現在は変わりつつありますが、日本の典型的な授業は教員が中心です。一方的に講義するだけでは本当の教育とは言えないでしょう。
 米国では学生が中心となって、議論を交わしながらインタラクティブな授業が展開されています。また、課題も多く、一生懸命に勉強しなければ授業についていくことは出来ません。こういった学生参加型の授業や、高い水準の教育内容に、世界の学生は魅力を感じているのでしょう。

――英語で学位を取得できるプログラムが増加していますが、どのようにお考えですか。
 良い傾向だと思います。私は他大学の大学院で授業を受け持っていますが、大学院では英語による教育の必要性が共有されてきています。私はその大学院で英語による授業を行っており、半分が日本人学生、もう半分が中国人学生、その他にブラジル人学生など少数の外国人でクラスが構成されています。英語コースは、欧米の学生だけをターゲットにしているのではありません。アジア、南米など世界中の学生に門戸を開くことになるのです。英語を教育の手段として取り入れる姿勢がもっと強くなっていくべきだと思います。

――日本の高等教育の問題点とは何ですか。
 日本は一番の強みと弱みが同じです。それは、「日本」という意識や日本のやり方へのこだわりが非常に強い一方、閉鎖的になってしまう部分があります。それは教育面でも同様です。試験というものは本来、一時のパフォーマンスだけではなくコンピテンス(能力)を測るものであるべきです。そのため、私は本学の英語のリーディング試験は学生に持って帰らせます。本やインターネットで調べても構いませんし、友達に相談することもできます。日本では珍しい手法で、学生も驚いています。ですが、実際のビジネスの現場でも、色々と調べ同僚に相談しながら問題を解決するはずです。形式的な教育は意味をなしません。こういった実用的な内容こそが現代社会で求められており、日本の高等教育は質的転換を迫られています。問題を共に考え学び合う環境こそが、学生の成長を促します。そして、その環境は世界中の学生にとって魅力的なことであり、普遍的に必要とされているのです。


John E. Plagens
 米国生まれのフィリピン育ち。バルパライゾ大学(米国)卒、ミネソタ州立大学大学院(米国)修士課程修了。専門は英語教育。ルーテル学院大学教授の他、新潟大学歯学部大学院、東北大学環境部門大学院非常勤講師を務める。

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