レオニード ヨッフェ 氏
(早稲田大学 商学部准教授)
文科省と外務省の連携を PR力、ネットワーク力が鍵
――世界中で留学生獲得競争が熾烈を極めていますが、日本の高等教育は海外からどのように評価されているのでしょうか。
地域によって異なる評価があります。まず、カナダやアメリカといった北米から見ると、日本の教育は大学よりも中学・高校教育が高く評価されています。PISA(OECD加盟国の多くで義務教育の終了段階にある15歳の生徒を対象とした調査)など統一テストでの高成績や、大学進学に向けた受験勉強により高い学力レベルを誇っています。アメリカはゆとり教育なので、日本をモデルとした高校教育を実施しようという流れがあります。しかし日本人学生は大学入学後、あまり勉強しないというイメージから大学への評価は高くありません。
また、日本の大学についてよく知らないという問題もあります。しかし、オーストラリア出身の知人は日本の大学を評価しています。オーストラリアでは第二外国語として小学生から日本語を学んでいる人が多いためです。日本に対する親近感や関心が強く、日本の強みや魅力を北米の人よりも知っているからです。しかし、現在経済的な成長により中国の存在感が拡大し、北米やヨーロッパでは中国語を勉強している学生が圧倒的に多い状況です。カナダで日本語を学ぶ学生は1990年代から半減しています。
――そういった状況下で、日本はどういった打開策を講じるべきでしょうか。
文部科学省が外務省と連携することが必要です。私は元々カナダの外務省に務めていました。学術交流が業務で、日本でカナダの大学を紹介していました。日本の外務省ではそういったポジションがないそうです。日本は世界各国にある大使館あるいは領事館に文部科学省の担当者を送り込み日本留学をPRすべきです。在日カナダ大使館、イギリス大使館は毎月、留学希望者のための相談会を開催しています。アメリカ大使館には、毎回100人以上の留学希望者が訪れています。日本には700以上もの大学があり、いくらインターネットで情報を公開しても情報量が多すぎて分かりづらいです。海外現地の大使館が窓口となり直接相談できれば、日本留学への第一歩はとても踏み出しやすくなります。
また、大使館のみならず、北米やオーストラリアの大学は世界各国で怒涛のPR活動を展開しています。日本はその姿勢がまだ弱いように感じます。
また、英語による授業を行うことです。日本全体でみるとまだ一部の大学やプログラムでしか行っていません。英語圏の学生だけではなく、高い英語力を持つ東南アジアの学生への門戸を広げることになります。私は東南アジアをよく訪れますが、日系企業が多数進出しています。日本留学が企業に評価されるので、英語コースを増加すれば東南アジアの学生にとっても魅力的で留学しやすくなるはずです。
――北米やオーストラリアの大学はどのようなPR活動を行っているのですか。
例えば、オーストラリアは卒業生の活用が特徴的です。オーストラリアの大学を卒業した学生が日本で有名になれば、その人物をスポークスマンにして大学を宣伝します。日本の場合、中国や韓国出身の留学生が多いですが、彼らが帰国後、自分の体験を積極的に語ってくれるかどうかは大学のネットワーク力にかかっています。カナダのトロント大学でも、日本人卒業生にトロント大学留学希望者の日本窓口になってもらっています。留学生獲得には、世界各地でのPR力、ネットワーク力の向上が大きな鍵になります。
Leo Yoffe
カナダ・モントリオール出身。マギル大学(カナダ)で学士を取得後、モントレー国際大学院(米国)で修士課程修了。カナダ大使館の外交官として数年間勤務し、言語教育、外交および学術交流に携わる。専門は試験と評価、コミュニケーション能力の評価法、国際関係。
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