Top向学新聞内外の視点>オコーナー ウィリアム氏


オコーナー ウィリアム氏 
(亜細亜大学 経営学部教授) 


BRICSの学生を獲得すべき  課題解決型奨学金の創設を

――日本の留学生受け入れの課題は何でしょうか。
 優れた内容で英語の授業をもっと多く提供すべきだと思います。例えば、気候変動、食料・水不足、人口増加問題などに直面し、私達は不安定な時代を生きています。そういった諸々の問題解決に役立つ授業を提供することで、日本人・外国人留学生の両方にとって魅力的になるはずです。英語での授業に不安を感じる日本人教員に対しては、文部科学省などが指導方法を学ぶセミナーを実施するなどすべきです。
 大学卒業後に、ビジネスなどの場面で役に立つ、実用的な能力をいかに身につけることができるかも重要です。例えば私は、「交渉技術」の授業を英語で行っています。日本人・留学生混合の授業ですが、米国のトップスクールの授業内容を参考にしています。

――世界で留学生獲得競争が活発化しています。日本はどのような戦略を持って対応すべきでしょうか。
 例えば、BRICSに集中して留学生を獲得すべきです。BRICSは人口が多く、この中には豊富な資源を持つ国がいくつもあります。日本は食料などを輸入に頼っている部分があり、資源をもつ国と友好的な関係を構築するのに留学生の存在は重要です。

――留学生を受け入れるにあたって、奨学金は欠かせない要素です。米国は、米国との相互理解に貢献できるリーダーを養成することを目的とした「フルブライト奨学金」を付与し、優秀な人材が多く輩出されました。日本はどのようなビジョンをもって、奨学金を提供すべきでしょうか。
 例えば、「21世紀ソリューション奨学金」というプログラムが良いのではないかと考えています。太平洋上に浮かぶナウル共和国は世界有数の裕福な国から経済破綻の状態に追い込まれているなど、21世紀は様々な課題を抱えています。そういった問題解決へのアイデアを選考要件にして、奨学生を募るのです。
 21世紀ソリューション奨学金は、奨学生だけではなく大学や企業にとっても有益です。奨学生のアイデアが実現可能であり利益が見込めれば、民間企業とジョイントベンチャーを立ち上げて製品やサービスを生み出すことができるなど様々な可能性があります。また、学生・大学・企業が一丸となって問題解決に取り組む姿を世界に示せば、日本のソフトパワーを高めることができるでしょう。諸々の課題解決への志をもつ学生が、留学先を日本に選べば今後貴重な人材になるはずです。


Michel Nix
 英国出身。ヨーク大学(英国)で学士号、バーミンガム大学(英国)で修士号を取得。1991年に来日。杏林大学、早稲田大学、東京外国語大学などで非常勤講師を務める。1999年に中央大学専任講師、2007年に中央大学法学部教授に就任。専門はカルチュラル・スタディーズ。


a:4956 t:1 y:0