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ラウ シン イー 氏 
(麗澤大学経済学部 教授) 


日本の魅力、もっとアピールを  入口のハードル下げるべき

――日本の留学生受け入れの課題点は。
  日本が留学先としていかに魅力的なのか、もっとアピールする必要があると思います。これまでは日本留学に関する認識は様々な誤解がありました。例えば日本の大学等の授業料は高いと思われがちですが、他の先進諸国と比べて高くはなく、国公立大学はかなり安いほうだと思います。また、日本語を勉強してからでないと大学に入れないため語学学習の初期費用がかかることが問題視されますが、大学卒業までの費用をトータルで考えると、諸外国への留学は日本以上に費用がかかります。実はコストの面で日本留学はたいへん魅力的なのです。また、外国人留学生の大半を占める中国、香港、台湾や東南アジア地域の華人社会など漢字圏からの留学生は、英語をゼロから勉強して米国留学するなら、同じ労力をかけて漢字圏の日本に留学したほうが、言語の習得効率から考えて魅力的だと感じる場合もあるでしょう。
  最も重要なことは、入口の時点で魅力を感じてもらえるようにすることです。例えばアジアから飛行機で7時間で来られる圏内に日本が位置し、高度な文化と豊かな観光資源を備えているということがいかに魅力的であるのか十分に理解されていないのではないでしょうか。こういう情報は積極的に発信していかなければなりません。留学を斡旋する仲介業者はたくさんあってよいのです。最も信頼できる良い業者を選べるわけですから留学生にとってもメリットが増します。情報を一つの窓口に集中してしまう必要は全くありません。問題はいかに良い情報を発信するかということであり、それらを仲介業者にどんどんオープンにしていくべきです。
  また、入試や入国手続きなどはもっと簡素化してスムーズに入ってこれるようにする必要がありますし、卒業後に日本企業に就職する人にはいかに日本人と同等に扱われて気持ちよく働いてもらえるようにするかが大事です。昨年の数字ですが、卒業した留学生の3分の1は日本企業に就職していますが、各種の支援策には省庁の思惑が強く出ており行政の介入が目立つ面もあります。しっかりした制度さえ作ればあとの発展は市場原理の流れに任せればよいのです。
  日本の社会制度はだいたい、「入るまでが厳しい」制度になっています。大学についても入試をクリアするまでが最も大変だというケースが多いです。しかし、短い日本語の学習を経て入試だけでその人の能力や資質を測れるわけではありませんし、外国人はそもそもスタートラインが日本人と同じではありません。すべてのことに日本人並みの理解を求める必要はないのであり、5割理解していれば日本人との融和は可能なのです。今後は入口のハードルを下げ、文化的な多様性を認める中で、その人の持つ創造性をフルに発揮してもらえるような自由な環境づくりを目指すべきではないでしょうか。


LAU Sim Yee
マレーシア出身。1991年東京工業大学理工学研究科修了、1998年東北大学大学院国際文化研究科博士号修得。民間財団での勤務を経て、麗澤大学経済学部教授、現職。専門は開発経済学、移行経済論等。


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