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ラチョット タンタスラセットさん (タイ出身) 
(東京大学大学院経済学研究科) 


日本企業のグローバル化に学ぶ
「空気」感じ取れるかがすべて


――留学を振り返っていかがですか。
  日本に10年いて思うのですが、日本企業のビジネスのノウハウを吸収するには大学にいるだけでは限界があり、やはり実際に企業で働いてみなければ意味がないと感じます。ノウハウの面では日本は大学より企業に蓄積があり、強いのです。
  日本企業は本当の意味でグローバル化していると思います。人をきちんと海外に送って情報収集し、現地との関係を強めていくからです。アメリカなどはサービスといえば製品だけで、現地に人を送らないことが多いです。逆に、世界中だれでも使えるようなものを最初から設計し、現地対応しない傾向があります。

――日本人はローカライズがうまいのでしょうか。
  人柄にもよりますが、確かに、自分を押し出したい側面も持ちつつ、大体みな海外のやり方を受け入れます。欧米はもともと外国人が多いせいか現地のやり方を受け入れませんが、やはりどちらかというと受け入れる人のほうが成功すると思います。

――就職活動で全く日本人と同様に仕事ができるとアピールする留学生もいます。
  本当に日本人のようになっているとしたらそんなことは言わないでしょう。それは普通「空気」で察知できるものなのです。面接の場でそういう微妙な空気が感じとれるかどうか。この国はそこがすべてです。言外の意味がわかり、通じ合えるようになるまで時間がかかりますし、留学生はそれがわかる人と分からない人とに極端に分かれる傾向があります。
  昔、自分はなぜこの「空気」を察知できないのかと考えたことがありました。しかしこの国に長くいると、日本人の中でも結構空気の読み違えは起きるものであって、皆それなりに苦労しているのだとわかるようになってきます。私だけではないのだと気づくと、対応できるところまで対応すればいい、と思えて幾分楽に思えてくるのです。留学生が空気を読めないのは彼らのお国柄の問題ではないのです。そのような日本社会の特徴をいかにわかりやすく説明し、様々な人に共有できるようにしていくかは重要なことだと思います。


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