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アシュラフ・エル・サマンさん (エジプト出身) 
(東方国際学院) 


エジプト人から世界人に
若者の相互理解が大切

――留学までの経緯を教えてください。
 私はエジプトでは観光会社に勤めており、ツアーガイドを日本語でできるように勉強していた時に、日本丸に乗る「世界青年の船」のプログラムに参加する機会を得ました。アラブや米国など様々な国から参加者があり、1月から3月までの2カ月間世界中を回りました。日本にも10日間滞在し富山の民家にホームステイしました。朝から晩まで日本の習慣に従って生活したおかげで、日本の文化や考え方がよくわかりました。
 青年の船での私のルームメイトはソロモン諸島、ノルウェー、日本の出身者でした。このプログラムには日本政府が費用を出しており、外国人の参加は無料です。そのおかげで多くの日本人の友人ができ、プログラムの後も互いの国を訪ねての親密な交流が続いています。
 参加後に私は世界が違って見えるようになりました。いわばエジプト人から世界人になったのです。国籍や宗教、肌の色に関係なく、私は皆と同じ人間であってそれ以上でもそれ以下でもない。その経験が日本での留学生活で大いに役立ちました。
 私は20年前にニュースで、日本人は休みが取れないと聞いていました。今でもエジプト人は日本人といえば「おしん」のイメージを持っています。私は日本に来てから休みが多いことに驚きました。日本人の持つエジプトへのイメージは、ツタンカーメンやピラミッド、ラクダなどで、現在の姿は分かっていません。お互いの現状認識にギャップがあるとイメージにゆがみが生じ、誤解の原因になってしまいます。そこで私は、現在のエジプトの社会や文化の姿を日本の小学生にボランティアで教えています。
 若者同士が理解し合うことが何より大切です。若者は将来の両国のイメージを左右していきます。その意味で青年の船のようなプログラムは、世界中の人々と友人になって交流関係を築くので、通過した人が戦争を起こすことはないでしょう。私の日本人の友人も多くが将来リーダーとなり、政策決定者になっていくと思いますが、若いうちにお互いを知り合って理解し合った経験があれば、争い事などは起こすはずがないのです。



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