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財団法人新エネルギー財団 「家庭用燃料電池」 


今月は、燃料電池の実用化と普及を推進する財団法人新エネルギー財団の芝池成人計画本部主幹に、家庭用燃料電池についてのお話をうかがった。

全く新しい発電機

――燃料電池とはどのようなものなのでしょうか。
芝池:通常の発電システムですと、化学エネルギーをまず熱エネルギーに変換し、それを機械エネルギーに変換した後に最終的に電気エネルギーとして発電します。今私たちが普通に家庭で使用している電気はこの方式で得ています。一方、燃料電池は、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するシステムです。簡単にいいますと水素と酸素から電気と水を作り出すまったく新しい発電機といえます。ですから、通常の発電システムに比べると変換時のロスも少なく、非常に発電効率がよいといわれています。

――燃料はどういうかたちで取り入れるのですか。
芝池:燃料は水素をそのまま利用する方法と、水素のもとになる燃料として天然ガス(都市ガス)、LPガス、灯油などの一般的な燃料を改質して利用する方法があります。酸素は大気中から取り入れます。この点もメリットとしてあげられるのですが、石油に頼るこれまでの社会からエネルギーを多様な原料から確保できるようになるといった要素が燃料電池には備わっています。また、現在は水素自体のインフラこそできていませんが、天然ガスやLPガス、灯油などはすでに日本全土に販売網が出来上がっています。ですから、燃料電池を置けば明日からでも使うことができます。つまり今のインフラを100%活用できるというわけです。

――他にもメリットがありますか。
芝池:機械エネルギーに変換する部分がありませんから、回転機構、内燃機関を使うと当然発生してしまう振動や騒音などを非常に低く抑えることができるという点もあげられます。さらには、これまでの発電システムは石油などを熱に変換するときに「燃やす」のですが、実はそこからSOxやNOxなどといった環境にとって良くない物質がでてくるのです。燃料電池のシステムですと、水素をつくるときに「燃やす」というプロセスを慎重に扱えるのでそれらも殆ど出てきません。環境にも非常にやさしいクリーンなシステムであるといえます。

熱と電気を併給

――家庭用の燃料電池システムとは。
芝池:2004年から2005年に市場に出てくるスケジュールで各メーカーも最後の仕上げにかかっています。燃料電池について言えば、種類は電解質の材料によって現在では4種類くらいあります。そのうち3種類は作動温度が数百度から1000度と高温です。これだと発電効率も非常に高いのですが、電源を入れてから例えば1000度にまであげるのには時間がかかってしまうなどの難点があります。ですから機動性が必要とされる家庭用やポータブルな機械など小さいものには向いていません。
  それで家庭用燃料電池については作動温度が常温から90度と低い「固体高分子形燃料電池」の開発に力をいれて進めています。作動温度が低いという点で材料も安く済みますし、起動や停止も簡単に行えます。従って応用範囲が広く、家庭用や自動車などでの利用にも適しているのですが、ただ、小型軽量化で扱いやすい分、発電効率に関しては他の燃料電池よりも劣るということはあります。
  しかし家庭用燃料電池は「コジェネレーション(熱電併給)システム」として非常に期待されています。現在の発電効率はHHV(高位発熱量)で30数%くらいで、いま最新の火力発電所は発電効率が40%後半から50%くらいありますので、発電効率だけでいいますと、送電ロスを差し引いても「固体高分子形燃料電池」では敵わない可能性があります。ただ、発電所では余った熱を捨ててしまっています。家庭用発電機の場合は、発電効率は30数%と低いですが、発電するときに出てきた熱をお湯というかたちで利用できるのです。そうするとたとえばいまは電気は電力会社から買って、電気温水器あるいはガス湯沸かし器でお湯を作りお風呂に入ったりしていますが、その分がほとんど要らなくなります。それを足し算すると、総合的に見て70%から80%のエネルギー効率が数字として期待できます。

年間光熱費を2割削減

――各家庭でのコストダウンといった点では。
芝池:使い方にもよりますが、年間光熱費の約20%、額にして2万円から5万円の節約につながるだろうと試算されています。たとえば10年で元をとろうとすると、50万円くらいの投資なら何とか許容範囲ではないかといわれています。新築から入れるとなるともう少し楽になります。ガス湯沸かし器は結構高くて30万円くらいしますが、それとの差は20万円ですから、年間2万円くらいの光熱費の差が出ればよいと考えられます。各メーカーも熾烈なコストダウン競争を繰り広げています。初期的な性能面ではかなりいいところにまできています。今回フィールドテストをしているのですが、実際に普通の人が普通に使って、しっかり10年もって金額もペイする装置を完成させるのがメーカー開発の最後の総仕上げの部分だと思います。