Top向学新聞日本で働く留学生OBたち>姜 春姫さん


姜 春姫さん(中国出身) 
(株式会社アミックス勤務、在日華人女性交流会代表) 


経験を共有できる場を作る
留学は一生続くもの


――留学時代を振り返って、有意義な留学生活を過ごすうえで大事なことは。
  当然ですが日本語のコミュニケーション能力をつけること、そして日本人との人間関係が大事です。特に、困ったことがあったら相談できる人や支えてくれる人がいるかどうかで留学生活は大きく変わってきます。
  就職して社会に出れば、日本の商習慣は独特です。電話対応など様々なルールを知らずにはやっていけません。母国との違いで一番驚いた点は、男女の役割の考え方に大きな差がある点です。日本の会社は女性には最初手伝いのような仕事をさせることも多いですし、女性自身もそれでいいと思っている人が多いです。中国では例えば妻のほうが社会的地位が高く帰りも遅いので、夫が買い物に出かけて食事を作る家庭もよくありますし、結婚してもずっと夫婦別姓のままですので日本とは大きく違います。ですから生活の中で日本の風習を学んでいくことが大事です。自分が正しく相手はおかしいと思っているからぶつかるのであって、なぜだ、と怒ったりせず、それが文化なのだと理解して受け入れれば問題は起こらないのかもしれません。

――在日華人女性の交流会の代表を務めていらっしゃいますが、その活動の目的は?
  あるとき、日本で生活してきた中国人の友人と話す機会があったのですが、自分にはない経験を共有することができ非常に有意義でした。それでより多くの人と経験を共有し合える場があればと考えたのが発足のきっかけです。最初の集まりで出てきた話題は「子供が小学校に入ったらどうするか」「私立学校や塾の選択はどうするか」といったことでしたが、経験がない外国人はそういった情報を入手するルートがなく、集うたびに様々な話が出てきて終わりませんでした。外国人は日本人と違い「何がわからないのかもわからない」のです。生活上のルールを知らないゆえに問題が起こり、起こしてもなぜ起こしたのか自覚していません。教えてくれる人がいない場合には、暗黙のうちに悟ることがなかなかできないのが外国人の難しいところです。そこでみなの経験を共有してわかることは教えあい、支えあっていこうとしています。
  社会制度の問題点も話題に上ります。留学生や外国人材の増加とともに、家族滞在の資格で一緒に来る人も増えていますが、母国で大学教員をしていたような人でも家族滞在ですので主婦をしているしかありません。そういう人がいきなり主婦にはなれないのです。外に出て生活したいのですが、日本語を勉強して来る人は少ないので、非常に不自由な中で我慢して主婦をしたもののうまくいかずに帰ってしまった人も実際にいます。
  また、親の世代は長くいた結果日本の生活に溶け込んでいったのですが、子供は最初から日本人と同じです。普通は子供が日本で就職して結婚するといえば親はみな日本に残るでしょう。しかしいま年金問題で、日本に残るか帰るかという議論が再燃しています。将来の自分の生活がかかっているのです。日本の厚生年金は、25年以上の納付期間がないと受給権が発生しませんので短期滞在予定の外国人にとっては掛け捨てになってしまいます。24年間続けて払っても帰国すれば3年間分の脱退一時金しか戻ってきません。在日華人女性交流会では2004年に国会議員を交えて年金問題の座談会を持ち、意見をまとめて提案しましたが、まだ根本的には解決されていないようです。私たちのほうから提案していかない限り、解決はないと思います。
  留学は留学だけでは終わらず、すべてはそこからスタートします。その後の自身の生活が関わってくるからです。その意味では単に海外に行くということにとどまらず、留学は一生続くものであると考えています。



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