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申 扶憲 さん (韓国出身)
(パンテック・ワイヤレス・ジャパン株式会社)
スペックが理由では窮屈 何がしたいか考えて行動を
――現在どのようなお仕事をされているのですか。
現在、二つの携帯端末開発プロジェクトに携わっています。韓国本社のエンジニアと、携帯端末を供給しているKDDI株式会社のプロジェクトマネージャーとの調整役を担当しています。また、品質管理のために端末のテストを様々な企業に外注しており、その仲介も行っています。例えば、画面の表示を見やすくするためにフォントを工夫したり、ユーザーにとって最も使い勝手がよい場所に独自のコンテンツを配置するなど、一つ一つ協議を重ねたうえで端末を製作しています。
大変なことは、マスター・スケジュール通りにプロジェクトをマネジメントすることです。様々な企業と連携しているので、ある部分で問題が生じるとスケジュール全体に支障をきたします。そういった場合に、どのような対策を立ててキャッチアップするのかが重要です。最終的に良い端末を作るという結果を得るため、全体の動向を把握しながら、一つ一つのステップをしっかり確認してプロジェクトを達成できるよう努力しています。
――なぜこの仕事に就こうと思ったのですか。
現在クラウド化が進み、あらゆる事が携帯端末で出来ます。自分から情報を発信することが好きで、情報発信ツールとしての携帯端末の可能性に興味がありました。
――日本社会で働く先輩として、留学生に伝えたいことは。
自分は何がしたいのかを考えて行動して欲しいということです。最近、スペックありきなことが多いと感じます。
例えば、英語が必要だから大学を休学して1年間アメリカに留学する学生がいるとします。その学生が心から「そうしたい」と思ってのことなら問題ありません。しかし、望んでもいないことを「将来的にこのスペックが必要だから」という理由で行うことは窮屈な感じがします。
学生の時、非言語コミュニケーションに関する内容の授業がありました。表情やジェスチャー、物理的な距離、言葉を発する「間」などもコミュニケーションなのだと知り、非常に面白いと思いました。その時、教科書に載っていた訪問介護に関する文章に偶然目を留めたのです。「訪問介護ヘルパーは要介護者の言葉だけではなく、表情、ジェスチャーから気持ちをすぐに察する」というものでした。関心をもった私は、二日間でヘルパーの資格を取得できる重度訪問介護従事者養成研修に参加しました。修了後は、全身の筋肉が麻痺する筋ジストロフィー患者の家に訪問介護ヘルパーとして3ヶ月間、実際に訪問介護を体験させて頂きました。大変な苦労を伴って生活していることを目の当たりにし、自分とは全く異なる世界があるのだと知ったのです。
そのアルバイトをきっかけに、ボランティアに興味を持ち始めました。その頃、在日韓国留学生連合会会長の経験から大使館との繋がりがあり、2018年に韓国で開催されるパラリンピックのボランティア募集の話を耳にしました。志願して、日本での多様な経験をアピールした結果、日本語担当ボランティアの内定を得ることが出来ました。振り返ってみると、大学の授業をきっかけとして、パラリンピックにまで関わるようになったのです。このように、自分が心から興味をもっていることに行動を起こすことで、様々なことが繋がってくるのだと実感しました。自ら求めることで、周りに面白いことがたくさんあることに気づくはずです。
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