Top向学新聞就職活動2016>白井 由美氏



多数の中小企業が支える日本の産業界  

留学生の強みは日本語


白井 由美氏 
(早稲田大学キャリアセンター課長)

 
 世界有数の経済大国である日本。海外でも名前が知られている日本企業は数多くあるが、実は日本経済を支えているのは中小企業なのだ。日本の産業構造など日本企業の特徴は、就職活動を行う上で知っておきたい内容だ。今回は、「日本の産業・企業の特徴」というテーマで、早稲田大学キャリアセンター課長の白井由美氏にお話をお聞きした。


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世界の中の日本


――日本で学ぶ外国人留学生はどのような企業で働きたいのでしょうか。
 大学入学時に留学生に対して将来の進路に関するアンケート調査を実施すると、「国際的な企業で働きたい」と希望する留学生が多いようです。そこで本学は、本格的な就職活動が始まる前に、日本と海外を比較して世界の中での日本企業の立ち位置を留学生に説明しています。
 全世界の企業を対象に総収入を比較してランキングを発表している「Fortune Global500」(2014年)を見ると、日本トップのトヨタ自動車は世界9位にランクインしています。上位500社にランクインしている国別企業数では、日本は57社で米国、中国に次いで第3位です。ランキング結果を見ると、日本は世界有数の企業が多数存在していることが分かります。


珍しい産業構造


――日本の産業界の特徴は何でしょうか。
 日本の産業界を分析すると3つの特徴があります。それは、①ありとあらゆる業界が存在している、②ひとつの業界に多数の有力企業がひしめいている、③優れた製品を作り続ける文化が受け継がれていることです。豪州は農業と資源がメイン、アラブ諸国はオイルが中心、欧米諸国は工業が強いことに加え食料生産国も多いといった特徴がありますが、日本は6割がモノ作り企業です。その製造業には全ての業種が存在しており、かつ多数の企業がひしめきあう世界でも極めて稀な国なのです。
 例えば自動車業界を見ると、トヨタ自動車に加え本田技研工業、日産自動車、スズキ、三菱自動車、ダイハツ工業、富士重工などのメーカーが存在しています。米国には自動車メーカーは3社しかありません。更に、創業100年を超える老舗企業が10万社以上ありその数は世界一で、半数以上が製造業です。
 このような日本の産業界は多くの中小企業(従業員300人以下)によって支えられています。全企業のうち99・7%が中小企業で、日本で働く従業員のうち69・7%が中小企業で働いているのです。更に、最先端の技術や世界トップクラスのシェアを占める商品を持つ中小企業が多数あることが日本の強みです。

――なぜ中小企業がこれほど多いのでしょうか。
 それは一つの製品を作るために多数の企業が必要だからです。例えば、一台の自動車が完成するまでには数万点の部品が必要です。この自動車製造を支える自動車部品メーカーだけで、日本に約2万5000社あります。部品以外にも塗料やカーナビ、ETCなど自動車一台のために多数のBtoB企業が協力しあった結果として、最終的に自動車が消費者の手に渡っているのです。


留学生採用ニーズ


――日本企業が留学生に求めるものは何でしょうか。
 企業によって留学生を採用する理由は様々です。大まかに企業の留学生採用ニーズを分類すると、①国籍に関係なく優秀な人材、②社内活性化のためのスパイス人材、③海外現地法人の幹部候補、④日本と海外を繋ぐブリッジ人材の4種類に分かれます。留学生に何を期待しているかは企業ごとに異なるため、留学生は企業の人事担当者や社員の方に確認することが重要でしょう。
 最近では、海外へ行って直接優秀な人材を採用する企業も増加してきています。世界中の優秀な学生がライバルとなるわけです。このような状況下で日本の留学生の強みが何かと言えば、やはり日本語力と日本での生活経験、日本文化への理解です。実際に多くの日本企業が留学生の採用にあたってビジネスレベルの日本語力を求めています。留学生が持つバイタリティや各人の個性をベースに、日本留学の経験を十分に発揮して就職活動に臨んでいただければと思います。




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