Top向学新聞今月の人ノラズワン サヌシさん


ノラズワン サヌシさん (マレーシア出身) 
(東京工業大学・在日マレーシア留学生会会長) 


日本人の態度に学ぶ  視野を広げてくれた留学

――日本にきたきっかけは。
  日本の文化を勉強したいと思い日本に来ました。大学での普通の勉強だけではなく、日本人のまじめさなどには学ぶところが多いと思ったのです。また日本には仕事のやり方などに独特のシステムがありますので、ぜひそれを学びたいと思いました。
  マレーシアはルックイースト政策の一環として、日本人教師にマレーシアに来てもらい、日本留学に必要とされる各教科を日本語で教えてもらうという契約を日本側と交わしています。それで私の通っていた高校にも日本人の先生がいたのですが、その方が非常に積極的な方でした。私はそのような日本人の仕事ぶりを実際に見て、日本に留学したいと思うようになったのです。ちょうど、日本にホームステイしたことのある親しい友人が「日本にはマレーシアにない良いものがいっぱいあるので、一緒に行かないか」と誘ってくれたので、二人で相談して日本行きを決めました。

――日本に来てわかったことは。
  日本に来る前に日本語はある程度勉強していたのですが、実際に来てみたらやはり思っていたよりもレベルが高かったです。最初の3ヶ月間は、人がしゃべるのを聞き取ることができませんでした。来日前にテープレコーダーで聞いていた日本語よりはずっとスピードが速かったのです。今では、もうすっかり慣れることができましたが、やはり最初は苦労しました。
  また文化面で違いを感じたことといえば、日本では例えばお店にはいると「いらっしゃいませ」とたいていいわれます。しかしマレーシアにはあまりそういう習慣はありません。サービス面での違いを感じました。

――将来の目標は。
  大体のマレーシア人は日本の自動車産業に非常に興味を持っていますが、私もその一人で、大学でも自動車に関連のあることを学んでいます。日本は国内で独自に自動車レース選手権を開催していますが、そのような国はアジアでは他にマレーシアぐらいです。しかしマレーシアの自動車産業は85年位からスタートしたばかりなので、歴史のある日本の自動車産業に追いつくにはまだまだ時間がかかると思います。ですから私は、将来は自動車メーカーの研究所などで働いて、母国の発展に貢献したいと思っています。マレーシアには日系企業の現地法人や工場などが多く進出していますので、例えばホンダなど日本の自動車メーカーか、あるいはマレーシアのペトロナスなどに入りたいと思っています。

――留学生活で得たものは。
  インフォーマルな面で、マレーシアの発展に必要と思われることを、直接自分の目で見て勉強できました。日本人の態度や礼儀、時間を守る面などをみると、マレーシアにはまだまだ発展の余地があるなと思わせられました。また、留学することで視野が広まり、世界の諸問題などを身近に考えるようになりました。留学はいろいろつらいことも経験しますが、それを通して自分の態度や考え方も変わるので、良い勉強になります。自分の国にないものを吸収できるので、一度は留学を経験してみることを薦めますね。

――在日マレーシア留学生会について。
  去年の12月に選ばれて会長になりました。マレーシア人は、マレー人やサラワ人などのブミプトラ系と、中国系やインド系などのノンブミプトラ系に分けられますので、マレーシア留学生協会の会長もブミプトラ系とノンブミプトラ系の人が一年ずつ交代でなっています。会長の立場はやはり責任が重いですね。留学生会では毎年就職セミナーなどを開催していますが、企業とのやりとりが特に大変です。しかしすばらしい社会勉強になります。また、留学生会は関東と関西にありますが、地方の留学生は活動になかなか参加できないので、大使館の提案でいま九州にも支部を作ろうとしています。9月には独立記念日を祝うイベントとして、マレー語と英語によるスピーチコンテストなども企画しています。