ファム・ナム・ハイさん (ベトナム出身)
(東京大学大学院博士課程 工学系研究科 )
2006年度先端技術大賞を受賞 ハイテクのためローテクを学ぶ
――ファムさんの研究について教えてください。
私の研究室では、半導体と強磁性体というものを融合するための研究を行っています。この研究は今年度の「独創性を拓く 先端技術大賞」(フジサンケイビジネスアイ主催)に選定されましたが、本当に光栄です。
この技術が具体化されるとどうなるかを簡単に説明すると、日常使っているコンピュータの中には計算を行うCPUと、データを保存するハードディスクという別々の装置がありますが、将来それらが一つになり、CPUにデータが蓄積されるようになります。そうするとノートパソコンなどはさらに小さく薄くすることが可能で、データがそのまま保持されますからそもそも起動する必要がなく、電源を入れるとすぐに元の状態に戻ります。まさにノートのようになり、消費電力も少なくなります。
――社会へのインパクトが大きい研究内容ですね。将来の目標についてはいかがですか。
私は今、「先端的」な研究をしてはいますが、そのためには様々な基礎的なことを身につける必要があります。要するに、ハイテクを極めるためには多くのローテクを学ばなければならないのです。そういう基礎知識を逆に応用して、将来母国に戻ったときに活躍したいと思っています。母国で先端的な設備が整っているとは限りませんが、基礎さえしっかり身についていればどんな状況でも対応できるのです。
例えば私の研究成果を具現化するためには、半導体製造装置のほかに、真空や機械設計、廃液の環境負担軽減などの分野の技術も必要とされます。先端技術を研究することによって実に多様な技術の裾野を広げることができるのです。日本はそのあたりの基礎体力が非常に強いです。ですから私は、今やっている研究が、必ずしも将来扱う分野になるとは限らないということも視野に入れて勉強しています。
また、これらの技術に加えて、ものづくりには様々な細かい配慮が必要です。ベトナムは今急激に発展していますが、これから世界に伍していくためには「プロの仕事」ができる人が必要とされています。ものづくりの哲学を備えた人が必要なのです。そういうものを日本で学んで帰りたいと思っています。