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ブルース・ストロナク 氏

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ブルース・ストロナク 
(横浜市立大学 学長) 


外国大学と共同教育制度の整備を  教育は一つの「売り物」

 ――日本社会の国際化の現状についてどうお考えですか。
 私は日本人の言う「国際化」という言葉の使い方に疑問があります。30年の帯日経験がある私でも、いまだにその意味が理解できないことがあります。日本人の言う「国際化」は、外国人の考える国際化よりも非常に意味が狭いです。例えば私は外国人として初めて日本の公立大学の学長になり様々なメディアから取材を受けましたが、そのこと自体不思議なことです。例えばオーストラリアの大学で日本人が学長になるといったことは別にニュースにもなりません。留学生についても、米国や英国にはもちろんインターナショナルスチューデントというカテゴリーはありますが、普通の学生と同じ扱いをしています。日本では外国人を特別視する傾向があるのではないでしょうか。良きにつけ悪しきにつけ、日本の社会は非常に均質的な社会ではないかと思います。
 しかし外国人である私が公立大学の学長になったという事実は、確かに日本が変わった証拠であると思います。まだまだ欧米諸国と比べると日本は鎖国状態で、均質社会の側面が強いです。しかしこの30年をみると、日本人の考え方も変わり、オープンになってきていると思います。例えば今では女性の労働環境については非常に良くなり、優秀な女性が様々なポストについています。次に変わっていくのは外国人の受け入れ環境だと思います。現在日本では少子高齢化による人口減と労働力不足の問題が非常に深刻ですが、不足した労働力は何らかの形で補われなければなりません。女性が社会参加を果たした次には、外国人が活躍する番です。日本社会もそのように徐々にオープンになっていくでしょう。

――日本の大学の国際化についてはどのようにお考えですか。
 よく「大学の国際化」が必要だといわれますが、本当の意味で国際化していくためには、留学生や客員教員の受け入れ、交換留学の推進だけにとどまらず、例えば外国大学との共同教育・共同学位プログラムのようなものを作っていかなければなりません。例えばMBA課程で60単位の取得が必要だとすると、20単位は日本、20単位は海外大学、20単位はインターネットのEラーニングでとるというような、両大学の学生が同じ科目を履修し同じ学位を取得するような課程が考えられます。取得した学位は、日本の大学の学位でもあり海外の大学の学位でもあるという形にする。これが、大学における国際化の一つのあるべき姿でしょう。キャンパス内に様々な外国人が見られるということは国際化の第一段階に過ぎず、第二段階、第三段階の国際化に進むためには、共同教育の制度を整える必要があります。
 また、大学が、「外」の意見や考え方に対してどのくらいオープンであるかも、その大学が国際的である度合いを測る指標です。教員の考えがオープンであり、学外のどこからでもアイディアをとりいれて実行し、その成果を確認できるということが国際的な大学の条件です。
 そもそも留学生を受け入れることがなぜ良いことかといえば、彼らが日本人とは異なる新しい考え方を持っているからです。したがって留学生だけでなく外国人の教員も管理職も積極的に受け入れたら良いと思います。日本人であっても、新しい考え方を持っていればそれでいいのであって、国籍は関係ありません。いずれにせよ、慣例に固執して異なる考え方を排除していては、日本がいつまでたっても変わらないのは確かです。

――日本人は海外の学生を引きつける魅力ある大学をどのようにして作っていくべきでしょうか。
 どうすれば自分の大学が「売れる」のかということは、日本に限らずどの大学関係者も考えていることで、それゆえ大学間の競争があるわけです。しかし日本では戦後の高等教育制度の中で文科省がいつも大学を守ってきたので、大学は外の世界を体験したことがないため、武器がなく無力な状態におかれたこともありません。したがって国内の大学間には競争がほとんどありませんでした。そのような日本の大学がいきなり海外の大学と競争するのは難しいことです。
 一方海外は非常に厳しい競争社会です。アメリカの大学の学長代行や副学長を経験した私から言わせれば、日本の大学はもっと民間の商業的な考え方を取り入れ、どうすれば「売れる」のかもっと真剣に考えなければならないと思います。日本の大学人は非常に伝統的な「学者」としての意識が強い人も多く、現実世界を考慮に入れたくないという考えの方も中にはいます。確かに一般教養を重んじる大学の存在意義も大きいですが、大学は社会の中に存在している以上、その社会から離れて存在することはできません。ですから、これからは一般教養と実践的な教育とをいかにして融合していくかが重要な課題になるでしょう。
 また、大学の教育は一つの「売り物」である以上、売り手である大学はマーケティングの手法を考えていくことも必要です。留学生の募集に関しては、大学のイメージ戦略が重要です。ケンブリッジやハーバードと聞けば、教育内容もよいのではないかというイメージを抱く人も多いでしょう。これらの「有名大学」はイメージ戦略をうまく用いてマーケティングしているのであり、日本の大学にとっては学ぶべき点も多いでしょう。


1950年生まれ。アメリカ出身。キーン州立大学卒。フレッチャー大学院より博士号取得。慶應義塾大学経済観測所(産業研究所)客員教授、国際大学大学院教授を歴任。専攻は国際関係学。


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