Top向学新聞今月の人朱 憶天さん


朱 憶天さん (中国出身) 
(横浜市立大学 国際文化研究科国際文化専攻) 


日中間諸問題のルーツ解明めざす

――研究の内容について。
  私は1898年に起こった戊戌変法運動の指導者、康有為の日本認識を中心に研究を進めています。彼の日本認識には様々な問題があるのですが、それは現在にいたるまで中国人の日本認識に影響を及ぼしています。ですから問題の原因を科学的に解明できれば、日中の友好関係を深めるのに役立つと思うのです。
  康有為は、日本の明治維新にならって立憲君主制を中国に樹立することを目指した人物ですが、彼は中国と日本は「同源同文」、つまり同じ文化であり、日本文化は中国文化から形成されたと考えていました。今でも中国人はそういう間違った考え方をする傾向がありますが、実際には日本人と中国人は本当に違います。康有為は変法運動当時は日本を一切訪問したことがなく、頭の中だけでイメージを作っていたので、日本を真に理解できてはいなかったのです。私も来日前は彼と同じように考えていたので、日本に来てショックを受けました。例えば日本の友人関係は中国とは違います。日本人と友人になることは本当に難しく、雰囲気的には友人のようでも、心と心の交流はあまりできません。日本人は、自分は自分、他人は他人と考える傾向が強すぎるようです。また、靖国神社の問題などは中国人は絶対理解できません。中国では悪人は死後千年万年経ってもずっと悪人で、英雄はいつまでも英雄です。日本人は50年以上も前のことは忘れたほうがいいというのですが、中国人は絶対忘れません。これは日中の文化の違いが摩擦の原因のように思えますが、実は中国人の中にある「同源同文」の観念がより問題なのです。中国の日本認識のルーツである康有為のその誤りを詳しく分析した論文は中国にはまだなく、彼についての研究は日本のほうがむしろ進んでいます。私は留学で、彼が体験していなかった日本文化を実際に体験できているので、だからこそ彼がなしえなかった真の日本理解を成し遂げたいと思うのです。留学生としての視点を生かした私の研究内容には、多くの先生方が注目して下さっています。将来は帰国後に本を出版して康有為の日本認識の問題を中国人に紹介し、日中間の諸問題のルーツを解明することで、国際理解の促進に役立つことができればと思っています。