IFSAは外国人留学生のための様々な情報提供、就職・転職支援(日本人海外経験者含む)までを行う非営利団体です。

王 睿璞さん

Top向学新聞今月の人王 睿璞さん


王 睿璞さん (中国出身) 
(横浜国立大学大学院 国際社会科学研究科) 


バランス・スコア・カードを研究  留学で日中の国民性を理解

――研究の内容について。
  私の専攻は管理会計で、バランス・スコア・カード(BSC)というものについて研究しています。これは企業の戦略的な管理システムで、管理会計に基づいて、企業経営までコントロールするための方法論です。BSCには、財務の視点、顧客の視点、内部業務プロセスの視点、学習と成長の視点という4つの視点があります。これらはいずれも企業経営に必要不可欠なものです。財務がなければ企業は何のために経営しているのか分りません。また、顧客がいなければ経営は成り立ちません。そして内部業務プロセスとは、顧客を満足させるための良いサービスを提供することです。それから学習とは、従業員が経営目標に対し自覚的に行動するよう教育することです。昔の会社は、例えば利益を追求するために財務の視点からしか経営を見ていませんでした。BSCはそれを変革するためのシステムで、4つの視点それぞれに対する評価指標を設定したうえで「来年までに売上高10%アップ」といった目標を設定し、そのためのアクションプランを作って実行します。今世界中の会社が実際にBSCを使って短期間に優れた業績をあげています。
  私の専門は、特に中国企業に最適なBSCを作り、それを中国企業に紹介することです。中国企業に対しては先述の4つにさらにもう1つ、政府の政策という視点を加えるべきです。中国では政府が企業に非常に大きな影響を与えているからです。例えばある事業に関しては、国立研究機関から優秀な人材を企業に派遣してくれて、その人の教育費用なども出してくれます。また今行われている政策に西部大開発がありますが、それに投資する企業には様々な優遇政策があります。これらの政府の政策をうまく利用すれば円滑に経営を行うことができます。

――留学のきっかけは。
  私は中国の大学を卒業後あるフランス系のスーパーマーケットに就職し、最後には会計マネージャーになったのですが、自分の成長のために管理面のことをもっと深く勉強しようと思ったのです。それと、外資系企業が中国に進出する場合、中国人とのコミュニケーションや意思決定に問題が生じます。ですから海外に行って他国について学び、他国の文化を理解すれば、うまくコミュニケーションできるようになり、それが仕事にも役立つに違いないと思ったのです。それで仕事をやめて来日し、修士課程に入りました。

――日本に来てみて印象に残っていることは。
  日本人は話し方がすごくあいまいなところがあります。今ではある程度理解できるようになってきましたが、いまだに慣れてはいません。私はいつでも自分の意見をはっきりいいます。そういった国民性の違いを理解できたことは一番大きな経験でした。あと、日本人のまじめさと忍耐力は非常に印象に残りました。友達や先生、アルバイト先の人々の仕事や勉強に対する姿勢などは私にとって非常に勉強になりました。

――日本に来て研究面で役に立っていることは。
  品質管理システムなど、日本人は企業経営に関することを詳しく研究しています。何に基づいて経営していくのか従業員が理解しています。例えばコピー機を1台組み立てるには、昔は一人がある部分を組み立て、次の人に渡る方式でした。それを一人で全部組み立てる方式に変えた過程を記録したテレビ番組を見たのですが、リーダーだけでなく従業員もどうしたらその目的を達成できるか自覚し、一人一人がリーダーとして細かく考え、チームワークを発揮していました。日本人のチームワークのパワーは他の国の人より強いと思います。個人の価値を強調するのではなく、一つのチームとしてみんなでやる、そういうことが経営には重要なのです。中国はアメリカと同じく、個人の価値を強調します。それははっきり区別できるところですね。日本のそういう点は、他の国も学ぶべきではないかと思います。
  また、日本人の研究開発に対する態度は中国人が学ぶべき点だと思います。中国の民営企業は今、低コストのものを大量に作れば業績が上がるということを考えています。しかし環境は変わってしまうので、やはり研究開発が必要です。新製品をどんどん作り新しい需要を作ることで成功するのが将来の傾向です。それを中国の企業にわかってもらいたい。多品種少量生産で品物の質や機能を上げることが必要です。

――逆に日本が中国に学ぶべき点は。
  日本は下の従業員が上に従うことが上手ですね。指示があれば何でもやるという感じです。日本は上下の意識が強いです。仕事上はやはり上と下はありますが、ただ指示に従うのではなく、ちゃんと自分で考えることが大切です。例えばあるものをここまで動かしてください、とリーダーから指示を受けても、指示が間違いで移したところが間違っていることもあるわけです。自分で考えていれば、「これはこうではないですか」と上司に報告したら、間違っていることが分ります。中国人は自主的に考えて「こうしたほうがいいのではないか」と相談すれば、正しければ上司は認めてくれますしリーダーとしてもあまり怒りません。しかし日本人の場合、いくら提案が正しくても「リーダーの指示は指示だ」ということがあります。それはやはり伝統ですからすぐに変えることはできませんが、もうすこし人間の自由性を認める部分があってもいいのではと思います。

――将来はどうしますか。
  中国に帰国後コンサルティング関係の会社に就職し、日本で学んだことを生かして、中国企業へのBSC導入に役に立てればと思います。


最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional