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向学新聞2010年10月号記事より>


「総合特区制度」創設

内閣官房
 

外国人活用へ規制改革案   採用企業への助成金制度を

 内閣官房の地域活性化統合事務局は、新たに創設を検討している「総合特区制度」の制度設計を行うため、7月20日から9月21日にかけて自治体や民間から特区の提案募集を行った。外国人の活用については、留学生の就職促進に向けた在留規制の緩和や宿舎の整備、外国人高度・専門人材の所得税軽減や外国人医師の活動制限の緩和など、受け入れに関する規制改革を打ち出す自治体が相次いだ。

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 総合特区制度は、政府が今年6月に閣議決定した「新成長戦略」の一環として、新たに創設を予定している特区制度。地方自治体や民間からの提案に基づいて、規制の特例措置や税制・財政・金融上の支援措置等をパッケージ化して実施するものだ。「国際戦略総合特区(仮称)」と「地域活性化総合特区(仮称)」の2種類について、政府が構想のアイディアを募集したところ、「予想を上回る多数の提案」(内閣官房担当者)が寄せられた。

 大阪府は、海外からの工場や研究開発施設を誘致しグローバル人材を獲得する特区案を提出。外国人高度人材の所得税を軽減し税率を引下げることや、子弟のインターナショナルスクールの授業料等の所得控除、学費援助制度の創設など税制上の改革案を打ち出している。また、家族を含む在留資格認定証明書交付手続き等の優先・迅速化や、留学生の就職促進に向けた在留規制の緩和、「泉北ニュータウン」の住宅のストックを活用した留学生への公的賃貸住宅の提供なども提案している。さらに、医療に関しては、関西国際空港隣接の「りんくうタウン」に国際外来を設置し、約60名の医療通訳を配置することを提案。外国人の医療従事者・研究者の在留期間を延長(改正入管法で5年→10年)することや、通訳案内士の資格がない者が報酬を得て域内での通訳案内を行えるようにする規制緩和策を提示している。

 また、京都市は人口の1割が大学生という「大学のまち」の特色を活かし、世界トップレベルの人材を誘致するための構想を提案。外国人研究者の所得税減免などの案を打ち出している。そして「京都国際マンガミュージアム」や世界的ゲーム関連企業、映画撮影所や芸術系大学・専門学校など地域の資源を活用し、世界トップレベルのクリエイターの発掘や海外展開を担う人材を育成する、「京都コンテンツクラスター」を形成。外国人クリエイターの出入国手続きの簡素化や、京都に定着する人材の永住要件の緩和を行う。

 いっぽう愛知県は、「外国人留学生アクティビティ特区」を提案。大学院や大学学部を卒業した外国人留学生を対象に、在留資格「進路選定」(就職準備等が行える在留資格)と「地域就職」(業種等を問わずに就職できる在留資格)を新設するよう求めた。そして外国人留学生を入居させる施設提供者に対して、助成金制度と低利融資制度を創設し、固定資産税の軽減などの優遇を与えるよう促している。さらに、県内に就職した外国人留学生への所得税の軽減や、外国人留学生の採用企業に対する助成金制度の創設などを通して、留学生の卒業後の定着を促進するなどの具体案を提示している。

 そのほか、新潟県は、北東アジアからの優秀な留学生を増やすための強力なインセンティブとして飛び級制度を創設し、大学進学や就職を早めたり、留学のために新潟県に在留する場合の留学ビザを免除して手続を簡便化する大胆な案を提示している。

 これらのほか、佐賀県や福岡県なども外国人関連の規制緩和策を提出している。

 かつて自民党政権時代の構造改革特区制度によって、自治体や民間からの提案をもとに、留学生の就職活動ビザや起業準備ビザの創設、夜間大学院への留学生受け入れなどが実現している。地域活性化統合事務局では、今回提出されたアイディアをもとに制度の詳細を検討し、来年度の通常国会に法案を提出することを目指している。



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