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向学新聞2010年11月号


外国での就職「経験を積むため」

厚労省調査
 

現地の学生に共通傾向

 厚生労働省外国人雇用対策課は10月7日、アジア諸国における高度外国人材の就職意識と活用実態に関する調査の結果を発表した(実施機関/独立行政法人労働政策研究・研修機構)。世界的な高度人材獲得競争の中で、日本企業が就職先として〝選ばれる〟存在となるために、アジア諸国の高度人材やその予備軍となる現地大学生の職業観・就職観についてヒアリングを行った。
 中国・北京および大連、ベトナム・ハノイの学生に調査したところ、就職には「雇用の安定」と「専門性を活かすこと」を求め、外国の企業に就職したとしても経験を積み数年で帰国するという共通傾向が浮かび上がった。あくまで自己のキャリアを積むワンステップとして外国での就職をとらえている現状がうかがわれる。
 調査地ごとの特徴としては、北京の大学・大学院生は国有企業を希望する学生が多く、日本を含む外国にある外国企業への就職は現実的なものとは考えられてはいなかった。いっぽう大連では、日本語で機械工学を学ぶ学生の場合は半数程度が日本での就職を希望していたが、その多くが2~3年から長くて10年程度働いてから中国に帰国したいと考えていた。就職理由としては、「技術を向上させるため」「経験を積むため」が圧倒的に多かった。
 ベトナム・ハノイの学生の場合は、約半数がベトナム国内にある外資系企業への就職を希望しているが、日系企業で働きたいと回答した者は日本語専攻の1名のみだった。「外国にある外国企業への就職」に関しては、「外国に一度も行ったことがないので外国企業に対する知識がない」ので希望しないという反応がほとんどだった。ただ、チャンスさえあれば働きたいと考えている者もおり、先進国への高い関心も見られた。 
 また、現在働いている外国人高度人材についてシンガポールと韓国で調査を行ったところ、シンガポールでは現地で長く働き定着している人材が多かった。賃金の高さや英語・中国語の使用、永住権が取得しやすいことや公共住宅への入居のしやすさなどが背景にあるようだ。
 いっぽう韓国で働いている高度外国人材の就職理由は「経験を積みたかった」が最も多く、近い将来に帰国を予定している率が高かった。高度人材であっても言葉の問題から社内でのコミュニケーションに困難を抱えるケースが見られ、「長く仕事をしてくれと請われても韓国で長く暮らす気はない」といった否定的な回答が目立った。社会の受け入れ体制以上に、労働慣行や文化の相違が外国人材の定着に大きく影響しているようだ。
 厚生労働省ではこれらの調査結果を分析、日本企業の外国人材活用を促進するための基礎データとして活用していく。



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