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向学新聞2013年6月号記事より>


グローバル人材育成が加速
 

42大学が特色活かした取り組み

 文部科学省は昨年9月、世界で活躍できる人材を輩出するため「グローバル人材育成推進」事業を採択した。同事業に選ばれた全国42大学は海外留学の促進、TOEICの目標点数の設定など、各大学の特色を活かした教育プログラムを今年から本格的に開始し、グローバル人材の育成を加速させている。

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 文科省が今年公表した統計によると、2010年に海外で学ぶ日本人留学生は約5万8000人と、2004年の約8万3000人をピークに減少が続いている状況だ。文科省事業のグローバル30が留学生にとって魅力ある教育研究環境を提供して「留学生30万人計画」の達成を主たる目標にしているのに対し、この事業は、高度で豊かな語学力・コミュニケーション能力や異文化体験を身につけ、日本人として国際社会に積極的に貢献できる人材の育成を目指している。
 
 同事業に採択された千葉大学では全学的にグローバル人材育成を推進しており、新たに「SKIPWISE」プログラムを立ち上げた。2016年までに学部生の3割を海外留学させ、2018年には全学部生の半数が卒業時にTOEIC730点をクリアできるように取り組む。そのため、学部を3年半で卒業できる制度(通常4年)など多様な学修年数の選択肢を学生に提供し、その空いた期間で留学できるよう工夫している。また、県内の成田空港や東京ディズニーリゾートなどでインターンシップを行っている。千葉大学学務部長の織田雄一氏は、「地域との連携を深めるだけでなく、多くの外国人と接する実地教育は学生の刺激になっている」と話す。
 
 同じく立命館アジア太平洋大学(APU)では、春・秋の2回入学や日英二言語教育を実施し、留学生比率が43%、外国籍教員比率が49%を占めている。「SEND」という海外でのインターンシップでは、すでに今春2~3月にはボツワナとベトナムに日本人学生を派遣。8月にはインドとタイにも派遣する予定だ。また、入学後早い段階で実施する海外体験プログラム「FIRST」は、154名(2013年)の学生を韓国へ派遣し、APU最大規模となっている。
 
 一方愛知大学では、現代中国学部のプログラムが同事業に採択され、同学部生の5割が中国語検定試験のHSK5級(6級が最高)を取得できるように取り組む。同学部は創設以来15年間、1学年約200名全員の中国留学を必修としており、現地での語学研修・社会調査などを実施している。さらに、日本を理解し正しく発信する力を養うための「さくら21プロジェクト」をスタートさせた。同学部の外国籍教員の比率は2割、中国人留学生も1割を超えており、日本人学生との交流が活発に行われている。「中国人留学生にとっても、外国で自国について学ぶことは新鮮なようだ」と愛知大学副学長の砂山幸雄氏は話す。
 他にも早稲田大学では、2020年までに全学部生(約8000人)、同志社大学では2016年までに学部生の約3割(1800人)の海外留学実現をめざす。また、東京海洋大学や武蔵野美術大学などが同事業に採択されており、多様な分野で活躍するグローバル人材育成が期待される。




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