Top向学新聞>2017年6月号

衆議院議員 穴見陽一氏 


特別インタビュー


自民党「一億総活躍社会の構築に向けた提言」


誰もが活躍する社会をつくるPT提言 座長



穴見陽一氏


 自民党の一億総活躍推進本部が、留学生のアルバイト時間制限の緩和等を含む提言を打ち出した。同本部の外国人施策に関するプロジェクトチームの座長を務める、穴見陽一氏にお話を伺った。


留学生の資格外活動の制限緩和を


日本語学校の質の確保と強化促す



――資格外活動の管理強化を提言した背景について。


 現在、留学生に名を借りた「出稼ぎ」目的と思われる留学生やそれを受け入れている機関の問題があり、法務省も厚生労働省も何らかの告発が無ければその実態が分からず、実質的に野放しの状態になっていました。まずこういった違法行為を把握し、悪質な留学生や受け入れ機関、中間にいるブローカーなどを是正し排除していく機能が必要です。


 例えば学校に行かない、過度に収入が多いなど、留学目的ではないことが明白な人たちを把握するための基礎データの融通ができるようにするための法改正であって、個々人をがんじがらめに管理するという考え方ではありません。極端な異常値が出ればきちんと摘発できるようにし、それを是認しているような教育機関を留学ビザの発給対象から外すことを想定しています。


 もう一つの目的は、しっかりと日本語を勉強して頂くということです。留学ビザを取って日本に学びに来て頂いても、教育内容が不鮮明なまま放置されているのではないか。そもそも日本語教育かくあるべしという基準、また日本語教師の持つべき能力と資格が問われていません。



――そこで「文科省が日本語教育内容の質の向上を図るための責任ある体制を構築すべきである」と。


 日本語学校を法務省から文部科学省の管轄に変えよと言っているのではありません。管轄は据え置いたうえで、日本語教育の標準や教師の能力の担保など、日本語をしっかり習得できるコンテンツの信頼性を高めていく必要があるので、そこに関して文科省が責任を持って行うべきだと提言したわけです。



――資格外活動時間の制限緩和も提言しています。


 あくまでも資格外活動がしっかり管理されていることが前提です。留学生は経済的な問題ゆえに働いているわけですが、週28時間の制限内で、日本で生活し勉強を続けていくだけの収入が得られるかどうかは疑問です。週35時間ぐらいまで拡大すれば、それなりの生活を安定させるだけの収入が得られるのではないかと考えています。


 日本人の場合、夜学の高校生や大学生はフルタイムで働いたうえで勉強しています。それを外国人だからと言って労働時間に制限を与え、それで勉強ができなくなるのはいかがなものでしょうか。いきなりフルタイムにはできないとしても、外国人はまず生活が維持できないと勉強もできないのですから、将来的にはそういう環境への配慮をきちんとすべきではないでしょうか。


 その意味では住宅支援についても非常に重要ですので、学校や地域が協力して、留学生の住宅供給が低廉に安定的に行なえるように支援する必要があると書かせて頂いています。



――就職についても、学部・院卒留学生の就職率を2020年までに約1・5倍にする目標を掲げ、現行の各種就職支援プログラムの予算増を打ち出しています。


 留学生の就職のマッチングがうまくいかない理由は、彼らの多くが将来的には帰国し母国の発展に寄与したいと願っているのですが、日本の就職が「メンバーシップ型雇用」になっており、企業側は留学生に生涯会社に貢献してほしいという期待が大きいからです。そういうギャップが非常に大きいので、企業側にも、職務に対して雇用する、いわゆる「ジョブ型雇用」である国際標準的な雇用の在り方を身に着けて頂かないといけません。留学生も、日本の労働市場の特殊性を理解したうえで、それにある程度適応できるような考え方で就職活動をして頂く必要があります。双方の認識のギャップを埋める努力をしていかなければなりません。


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あなみ・よういち 大分県佐伯市出身。自由民主党所属(2期)。自民党政務調査会会長補佐、一億総活躍推進本部事務局次長。株式会社ジョイフル代表取締役相談役。



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