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新時代新思考 外国人との共生 ~平成以後の問題とは~ 東京大学名誉教授 伊東 俊太郎 氏

Top向学新聞新時代新思考>2019年4月1日号

新時代新思考
外国人との共生 ~平成以後の問題とは~ 


伊東 俊太郎 氏
東京大学名誉教授



<いとう しゅんたろう>
1930年東京生まれ。科学史家・文明史家。日本比較文明学会名誉会長、国際比較文明学会名誉会長。地球システム・倫理学会名誉会長。東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授、麗澤大学名誉教授。著書は『伊東俊太郎著作集(全12巻)』をはじめ多数。


伊東 俊太郎 氏



留学生受け入れは国際的公共の試金石


「地球倫理」先駆けて考えよ


 少子高齢化の進展、外国人労働者の急増、AIの進化など、今日我々は人類史的ともいえる社会の変化に直面し、絶えず価値観の見直しを迫られている。平成以後の時代を見据えた新しい思考のあり方とはどうあるべきだろうか。科学史家・文明史家の伊東俊太郎氏に伺った。


 
国際的・環境的な新しい公共性

(編集部)外国人との共生がいまクローズアップされています。

 他者との共生をどうやって実現するかが問題となっています。自己と他者の共存だけでなく、他国・他文明との共存をどう考えるかが平成以後の重要な問題になってきます。
 「白熱教室」で有名なアメリカのサンデルは、アメリカ憲法に基づいたアメリカ的公共を主張しています。彼に足りない点は、国どうしが仲間になるという国の間の公共です。つまり「国際的公共」が欠けているのです。そしてさらには、自然という他者とどう付き合うかという点が欠けています。自然も重要な他者であり、自然も生かし人間も生きる共生を考えるべきです。つまり自然を含んだ「環境的公共」をどうつくるかが問題になります。この「環境的公共性」と「国際的公共性」という二つの新しい概念を日本から提唱し、イニシアティブをとっていくべきだと考えています。

(編集部)人間と自然を対等な立場に置いて共生を目指すべきというお考えは、外国人との共生にも重要な視点を提示されています。外国人を単に「人手」ととらえるのみで、来た人とともに栄えていくという視点がないなら、経済格差問題として構造化された移民問題を再現するだけのように思います。

 アジアの人たちを使ってやるというような考え方は最大の誤りで、むしろ日本を助けてもらうくらいの考えに改めるべきです。語学など特別に配慮が必要な面への手当てを十分に考え、フェアに扱い、「来て頂く」のだと考えるべきです。物のように不足部分を補う存在として考えてはいけません。外国人の受け入れはまさに「国際的公共性」が実現する場であり、その試金石なのです。
 「国際的公共性」という言葉は新しいですが、100年のスケールで考えると当たり前になる時がくるでしょう。つまりそれだけ国境が低くなるのです。働きたい所、生きたい所で生きることは人間の根本原則ですが、そのような状態に近づいていっても国境や国は消滅しないでしょう。国のまとまりは必要です。例えば格差の解消に具体的に取り組むとしても、国単位でしっかりと格差解消のために税制を改めるようなことをしないと、個人の力では無理があるからです。企業が1億円を100人にわけて贈呈するのもよいと思いますが、たかだか1億円では限度があります。
 国が存在したうえで、自由な行動ができる限り多くなり、その人の持ち味が最も生かせるところで生かせて生きがいが感じられる。そういうことが地球的規模で行える時が100年後ぐらいには来るだろうと思います。今はそういう状況の始まりです。そしてこの先100年も経てば国は選べる時代になるでしょう。今留学生をどう招くかという問題は、まさに国際的公共の重要な始まりなのです。
 そのため日本人は「排外主義」をしりぞけ、「地球倫理」を先駆けて考え、世界の人が素晴らしいといって賛同してくれるものを打ち出す唱道者、理想を掲げるその原点になるべきです。そういう誇りを持てる国にならなければいけないと思います。



専門家としての天皇陛下


科学史の論文をご執筆



科学の専門家としての天皇陛下

(編集部)4月末でご退位される天皇陛下も昨年末、外国人を社会の一員として温かく迎えるようお話されました。日本で共生をどう実現するかが問われています。ところで伊東さんは天皇陛下に御進講されていたとお伺いしていますが。

 お呼びをいただき、芳賀徹さん、村上陽一郎さんらとともに、だいたい夜に2時間ほど陛下とお話させていただいていました。話題は歴史一般、特に科学史のお話が多かったです。陛下はご自身でとても勉強していらっしゃって、日本の科学について科学史の論文を雑誌『サイエンス』にご寄稿されました。大変素晴らしい内容で、私も少し相談には乗りましたが、ほとんどご自身でお調べになってお書きになりました。魚類、特にハゼの研究の専門家であり、新種も発見されています。あれほどの知識をお持ちのご皇族は世界どこにもいないと思います。
 でも皆さんにあまり知られていないと思うのは、天皇皇后両陛下が日本の伝統を守り続けている方だということです。皇后陛下が飼育が大変な蚕の世話をしておられたり、天皇陛下が稲をずっとご自身で植えて収穫をされたり、月に何度かの祭祀をずっと続けておられる。外交面でも外国大使の親任式をはじめ様々な機会に相手のことをお気遣いになり、来た人みなが良い印象を持つので、日本の外交官以上に親善の役割を果たしていらっしゃるのではないでしょうか。

(編集部)震災のときも親身になって被災者と一対一でお話されていました。

 あれほど国民に溶け込んで一生懸命に任をつくされた天皇はいませんでした。間違いなく今まで日本が持ちえた最高の天皇であり皇后だと思います。
 皇太子殿下も水の分野がご専門で、テムズ川と瀬戸内海の比較をされていました。大変立派な気配りのある方で、日本を代表できる方です。その意味で本当に今度のご即位はおめでたいことだと存じます。





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